人口密度【世界一】の秘境に挑む!アキラッチョの日曜日
スポンサーリンク
これは、つい先日の話です。
僕の息子が出場する「水泳記録会」に応援へ行った時の話です。
その水泳記録会は、兵庫県の”とある主要都市”にある「総合体育館のプール」で行われたのですが、実はそのプールは兵庫県で1番ストレスフルで有名なプールだったのです。
この水泳記録会は、小学生から高校生まで、おそらく何百人のスイマー達がしのぎを削る場なので、応援に来る保護者の人数も(子供の人数 × 1~3)人くらいの大人数になります。
そしてその大応援団を収容する”応援スペース”が「猫のひたい」ほどの広さ、いや狭さなのです。
特に参加人数が最も多い50m自由形の時などは、最大瞬間人口密度は間違いなく世界で1番じゃないかと思います。
最大瞬間人口密度チャンピオンです。
50m自由形といえば「めっちゃすごい記録を狙っているトップスイマー」から「とりあえず部活に入らなきゃ!ということで水泳部に入りました」的な選手まで、様々なレベルのスイマーに与えられた特権的レースです。
おそらくこの日も男女合わせて300人以上の選手が出場しているはずです。
ここで”猫のひたい”レベル応援席の説明をします。
猫って顔から頭まで全部に毛が生えているので、どこからどこまでがひたいか?と問われると困りますが、とにかく狭いっていうことです。
それはプールの2階に設けられたガラス張りの応援スペース。
そこには一列のベンチが並べており、わずか20席くらいしか座ることができません。
そのベンチの後ろには約1.5mの立ち見席・・・
というよりは単なる通路。
僕の身長は174cmなので、まっすぐ横になって眠ることなどは絶対にできません。
ましてや背伸びなどは、もってのほかです。
そのわずか1.5mくらいの通路に、我が子の応援に駆けつけた保護者の方が、ほぼ3列くらいになって肉団子みたいになっているのです。
いや、「3列」ではなくて
「3行」の間違いでした。
ベンチも含めたら4行。
そしてベンチとガラスの間にもウンコ座りをした保護者の列があり、合計5行の応援席になっていました。
他の表現で例えるなら「5層のバウムクーヘン」。
しかしバウムクーヘンのように、ペリペリときれいに層に分けることも難しい状況なので、「何層あるかわからないパイ生地」と表現した方が正しいかもしれません。
あふれかえった人溜まりの熱気で、応援席のガラスはすでにくもり始めてました。
せっかく自分の子供が泳ぐ順番が来たのに、白いくもりガラスによって無情にも視界をシャットアウトされている人もいます。
どんなに目を細めても、くもりガラスの向こうは風の街じゃないんです。
人混みをなんとかかき分けて、奥の方へスペースがないかと、土の中を一心不乱に掘り進むモグラのように奥へ奥へと、まさに掘り進んで行きました。
最深部近くになると、更にすごい熱気でした。
ここは地球の中心か?それとも世界の中心か?まわりを見渡してみると
全員、汗びっしょり状態です・・・。
せっかく綺麗にお化粧をして来た(はずの)若いお母さんも、流れ落ちる滝のような汗のせいで、目から黒い涙を流している人もいました。
そしてハゲたおじさんの頭頂部にも、汗の水滴がコロニーを形成していました。
こんな水滴がアサヒ・スーパードライの缶の表面にいっぱいついていたら、めっちゃ冷え冷えで最高ののどごしを楽しめるビールに見えるのにな・・・と思いました。
しかし、そのお父さんの頭頂部は
最後まで、スーパードライになりませんでした。
滴る汗、激しい熱気、曇りガラス、異様な匂い・・・そして脱水。
僕はふと思い出しました。
美味しいトマトって、確かこんな状況で育てられたトマトじゃなかったっけ?
確か『美味しんぼ』で絶対に読んだ記憶がある!
って、薄れゆく意識の中で思い出したのです。
もし僕が熱中症で倒れてしまい、このまま意識が戻らなくなってしまったら、この世で最後に考えたことが「家族」のことでもなく「世界平和」のことでもなく「美味しんぼのトマト」になってしまう。
そんなのでいいのか?マイ人生!
馬鹿馬鹿しいので考えることをやめました。
いよいよ僕の息子のレースが近づいて来ました。
しかし人混みは全く解消されません。
それぞれの人間が自分の領土(立っている場所)と制空権(隣の人との隙間)を主張しながら、三次元的に絡み合う空間で、普段使わないような筋肉をフル稼働しながら、無理な姿勢を保持し続けているのです。
ちなみに「制空権」の意味は次のようになります。
航空戦において、味方の航空戦力が空において敵の航空戦力を撃破または抑制して優勢であり、所望の空域を統制または支配し、敵から大きな妨害を受けることなく、陸・海・空の諸作戦を実施できる状態およびその力である。
引用:「ウィキペディア」より
そして息子のレースの順番になりました。
僕は右手にAmazonで購入したビデオカメラを手にしました。
しかし、後からもぐって入って来た新参者のモグラには、十分なビデオ撮影スペースなんてもちろん用意されていませんでした。
そんなの当たり前です。
例えば、すごく評判のいい村に引っ越したとしましょう。
隣の家に住んでいる村長さんがやって来て、おそらくこう言います。
「ようこそ我が村へ!これからずっと仲良くしていきましょう!」
しかし、新参者には決して「お祭りの主役」がまわってこないのと同じです。
村人と認めてもらうには、その村に十年くらい住むか、それとも新たな新参者(しかも愛想の悪い)が来なければ、住民権なんて認められません。
それはモグラの世界でも同じなのです。
わずかにできた人と人との隙間から見える向こうの世界は、曇りガラスのために阻まれていました。
一瞬見える瞬間もあるのですが、プロのスナイパーでないと狙えないレベルのわずかな隙間でした。
どうしよう、どうしよう。これは困った・・・全然見えないし・・・いや、待てよ・・・空だ!空から攻めればいいんだ!
新参者のモグラは地下での生活を捨て、自分の目が太陽の光で潰れてしまうことも覚悟し、空からアタックすることに気がついたのです。
そして空へ・・・
僕はビデオカメラを持った右手をまっすぐ空へ向けて伸ばしました。
そして左手を追従させて、モニターの角度をほぼ真下に向けて、壁の向こうの世界を覗き込むことにしました。
作戦成功!!( ´∀`)
その真下に向けられたビデオカメラのモニターを、空の方向へ向けられた僕の視線が捉えた瞬間、壁の向こうの世界を捉えることに成功したのです。
あとは自分のこの両腕が、どれくらいの時間、地球の重力に打ち勝つことができるかだけです。
それはモグラの目が、どれくらいの時間、太陽の光と戦うことができるかと同じです。
「地球のみんな、オラに元気を分けてくれ!!!」
両手を天にかかげた僕の姿勢は、ドラゴンボールの元気玉をためる孫悟空のようでした。
このままフリーザを倒せるくらいの元気玉がたまるんじゃないか?って、マジでそんな気がしてきました。
そしてバカなことを考えている自分自身に失笑しました。
元気玉がたまる前に、レースが始まってしまったのです。
勢いよく水面に飛び込むトビウオたち。
そして舞い上がる水しぶき!
そんなものは僕のモニターには”皆無”でした。
5層に渡る人の壁は高く、そして厚みがあったため、角度的に捉えることのできるものは、2行ほど前のおじさんの頭頂部くらいしかありませんでした。
舞い上がる水しぶき!ではなく
コロニーを形成する頭頂部の汗しぶき!でした。
僕は諦めました。
モニターの下の方から我が子が出てくるのをひたすら待ちました。
5秒くらい待ったでしょうか、真下に向けられたモニターの下端から選手たちが一斉に出て来ました。
僕はエビ反りになった状態で、自分の子供をその中から懸命に探しました。
我が子よ!一体お前はどこにいるんだ?
心の中で叫びました。
幸い6コースを泳いでいたので、比較的発見しやすく、元気玉をためながらえび反りになった僕(おそらく口もポカーンと開いていた)でも瞬時に見つけることができたのです。
そして画面の下から上に向かって泳いで行く我が子を追跡することにしました。
まずはズームアップ!
なんとか画面の中心に我が子を捉えることができました。
しかしそれと同時に、モニターの右から突然ボッサボサの黒い影が現れ、我が子の姿を覆ってしまったのです。
今度は3行前に立っているおじさんの髪の毛でした。
髪の毛、邪魔なんだよ!くそーっ!
なんでハゲてないんだ!くそーっ!!
そんなことを思ってしまった僕は、神様からの罰で、近々ハゲると思います。
よし、左に少しスペースを感じる!少しだけ、ほんの少しだけでも左のおばちゃんに近づくしかない!
僕は両手を挙上したまま、そして顔は天を仰いだまま、雨乞いをする古代人の踊りのように、左へ、ほんの少しだけ左へと、おばちゃんの制空権を侵害することなく、わずか3cmの平行移動に成功したのでした。
息子よ・・・なんだ、そんなところにいたのか。
再びモニターに我が子を捉えることができたのです。
そして場面はクイックターン。
すでに25m(すなわち全体の50%)が終わってしまいました。
残りわずか15秒間。
気持ちを持ち直して、この元気玉をためるような、いや雨乞いをする古代人の踊りのような姿勢で、僕はただじっと耐えればいいのです。
15秒間ではフリーザを倒すことはできない!
しかし、雨一粒くらいは降らすことができるはずだ!!
いや、もうそんなことはどうでもいい・・・。
集中だ、集中するんだ。
そう思った瞬間、次の悲劇が起こりました。
突如、モニターの左の方から今度は黒い物体が出現してきたのです。
きたな!ブラックモンスター!!
そして無慈悲にも、僕のビデオカメラはその黒い物体に、約10秒間にもわたってフォーカスを合わせ続けてしまったため、愛する我が子はの姿は・・・
単なる背景へと変わりはててしまったのです。
「なんじゃこりゃーっ!!」
(”太陽にほえろ、ジーパン刑事”調に)
モニターから視線を外し、前をキッと睨みました。
そして、そのブラックモンスターの正体がわかりました。
それは・・・
窓枠(まどわく)。
そしてレース終了・・・お疲れ〜( ´∀`)
僕の息子は完全燃焼できたのだろうか?
お父さんは・・・
「燃え尽きたよぉぉ・・・」
”明日のジョーの最終回”ばりの結末でした。
何もかも真っ白です。
「立てっ!立つんだ!!」って言われても、もう立てません(実際問題)
元気玉も不発です。
雨を降らすこともできません。
でも、感謝をすることは忘れません。
神様! いつも素敵な日曜日をありがとう ^ ^
ハゲないように、形式的なお礼だけでも・・・。
〜 完 〜