お医者さんになって、はじめて患者さんに注射した時の話
4月になりました。いよいよ本格的な春ですね〜♪
一般の会社と同様で、病院にもたくさんの新しい職員さんが入職してきます。
この数年、週休3日のスローライフを送っているアキラッチョも10数年前はピッカピカの研修医でした。
大学病院に就職したばかりの時は、毎日がドキドキワクワクの連続だった記憶があります。
今回は僕が研修医として大学病院で働き始めた時に、初めて患者さんに注射をした時の話をしようと思います。
スポンサーリンク
はじめての注射
みなさんご存知の通り、医者は「人を切る」ということを公認されている仕事です。
お腹や頭を切って治療する「手術」だけではなく、人の体に針を刺す「注射」も基本的には人を”傷つける”行為になりますが、治療という名目があれば、お医者さんはブスッと針を刺しても誰にも怒られません。
もちろんお医者さんになったばかりの時点では、人に針を刺したという経験は(医学部での実習以外には)ないはずです。
そんな中で、研修医は初日から病院に入院中の患者さんに注射をしなければならないのです。
患者さんに注射をする前に、まずは研修医同士でお互いの腕に注射の練習をしまくります。
コツを掴むのが上手い研修医であればすぐに注射をマスターすることができるのですが、何をやっても下手くそな研修医の先生もいます。
そんな研修医が相手になると、針を刺された状態で皮膚の下の血管をグサグサと探られるので、たまったもんじゃありません。はっきり言って拷問です・・・。
ある程度のレベルで注射ができる様になるまで、相手方はめった刺しにされることもあります(汗)
当時の大学病院ですが、看護師さんは注射の準備をするだけで、朝・昼・夕の薬の注射は全て研修医の仕事でした。
僕たち研修医は練習に練習を重ね、初めて患者さんに注射をする時がいよいよやってきます。
ベテランの看護婦さんに、注射が山ほど入ったトレーをガサっと渡されて「これ全部お願いね!」って忙しいそうに(そしてアッサリと)言われたのを昨日のことのように覚えています。
「緊張しないように頑張ってね❤︎」って、優しく声をかけてくれるほど看護婦さんは暇ではないのです。
研修医なんて、最初の頃は戦力にならないので、完全に邪魔者扱いです(笑)
アキラッチョが人生で初めて注射することになった患者さんは脳腫瘍の患者さんで、化学療法をたくさん受けているせいで血管がほとんどわからなくなっている方でした。
こんなに血管の浮き出てこない患者さんなんか・・・絶対に失敗するよ・・・と、注射をする前から冷や汗が出てきました。
こちらの動揺がバレてしまうと、患者さんは思いっきり不安になってしまうため、表面上は平静を装いながら震える自分の手と言葉を落ち着かせることに集中しました。
「それでは刺しますよぉ・・・」
思い切って血管らしき場所に針をブスッと刺しましたが、「痛いっ!」って言われただけで針は血管に入りませんでした。
ちらっと患者さんの顔の方を見上げてみると、明らかに不満そうに僕を見下ろしていました。
そしてその瞬間・・・額や脇、そして背中や手のひらまで、俗に言う”変な汗”が吹き出してきたのです。
それは本当に”玉のような汗”でした。人間ってこんなに一瞬で大量の汗をかけるんだと感心するくらいの汗でした。
決して「今日は本当にいい汗かいたね!」って褒められるような代物ではありません。
結局、一回失敗しただけでその迫力のある患者さんに怯んでしまった僕は、通りすがりのまだ名前も知らない上級医の先生に注射をお願いしたのでした。
後から他の指導医の先生に怒られたのですが、僕が注射をお願いした先生は、大学病院助教授という肩書きの偉い先生だったようです。
さすが助教授!って拍手しながら賞賛したくなるくらい、注射も上手でした。
スポンサーリンク
***************
4月の病院は、若い研修医の先生や看護師さんなど、医療の現場に入ってきたばかりの人たちがたくさんいる、ある意味「危険な場所」なのかもしれません。
上級医の先生やベテラン看護師は、新人さんたちは失敗するものとして常に目を光らせていますが、それでもミスに近いことが起こりかねません。
それでも一生懸命に仕事を覚えようと頑張っている若い人たちを暖かい目で見守ってあげるのか、それとも厳し態度で自分のそばに近づけないのかは患者さんにもよります。
研修医というものは、指導医の先生だけでなく、患者さんや看護婦さんにも育ててもらう職業なんです。
そんな初々しかったアキラッチョですが、今では注射を一回失敗したくらいでは汗ひとつかかないくらい度胸がつきました。
”慣れ”って本当にこわいですね(笑)
まあでも・・・「僕、失敗しないので」・・・と言い切れる自信はあるので、変なふうに誤解しないようにしてくださいね ^ ^
これからも”最高級の地域医療”を提供できるように努力していこうと思います。
それではまた!