脳神経外科医になって、はじめて”自分一人”で手術した時の話

はじめての手術

 

個人差はあると思いますが、生きていると「人生初」というものに必ず遭遇します。

もちろん、脳神経外科医という仕事をしていれば、術者としての「人生初・手術」を数多く経験することになります。

アキラッチョも今までにたくさんの脳神経外科手術を経験してきましたが、忘れられない手術がいくつかあります。

その中でもはじめて自分で手術をした時の経験は、特に印象に強く残っています。

今回は、脳神経外科医になってはじめて”自分一人”で手術した時の話をしようと思います。

 

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はじめての手術

脳神経外科の手術にもピンからキリまでありますが、脳という大切な臓器の手術なので、基本的には難易度が高い手術が多いです。

そのため医師免許を取得して脳神経外科を専攻しても、自分一人で脳外科手術をするチャンスなんてすぐにはめぐってきません。

手技の未熟(=ヘタクソ)な脳神経外科医に、脳という大事な臓器の手術なんか任せられないというのもありますが、何年も修行してやっと手術を任せてもらえるようになった中堅クラスの脳神経外科医も、そう易々と若い先生なんかに手術を譲らないというパターンも多いです。

オレだって何年もかけて手術させてもらえるようになったのだから、お前らなんかにさせねーよ!みたいな感じです(笑)

そのため手術のチャンスをもらえない若手の脳神経外科医の中には、そのような体制に疲れてしまって脳神経外科を辞める人もいます。(若くても、手技の上手な先生はいるのにね・・・)

 

それはさて置き、アキラッチョが人生で初めて脳外科手術をした時の話に戻りましょう。

僕が脳神経外科医になって初めて自分一人で手術したのは、忘れもしない研修医一年目の冬です。

執刀が任されたのは「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」という病気の手術でした。

 

慢性硬膜下血腫は特に高齢者に多い病気ですが、頭の怪我をしたあとで徐々に頭の中に血液が溜まり、その血液が脳を圧迫することで歩けなくなってくる恐い病気です。

しかし、頭(頭蓋骨)に穴を開けて血液を抜いてあげることで症状は完全によくなります。

局所麻酔の手術なので、脳神経外科医が一番最初に覚える難易度の最も低い手術なのです。

それまでに上級医の先生について何度もその手術を見ていますが、自分が術者となるとやはり不安になり、手術の前日からドキドキと緊張した記憶があります。

 

くも膜下出血、治療、水頭症

 

手術当日の朝を迎えました。

脳外科手術手技の教科書や、自分でまとめた手術ノートを片手に持って、ドキドキ(ワクワク)しながら手術室に入って行くと、すでに患者さんは手術台の上に横になっていました。

初めての手術なので、僕の横で指導してくれる上級医の先生がついてくれるはずです。

まだかな・・・まだかな・・・と待ち続けていましたが、待てども待てども上級医の先生の姿が見えません。

手術室の看護婦さんからも、言葉には出しませんが「早く始めてよ〜」とか「次の手術もあって忙しいんだから〜」といった感じの険悪な空気が漂い始めていました。

準備から15分くらい待ったところでさすがにこれはマズイ!と思い、手術の指導をしてくれるはずの上級医の先生に電話をしてみたのです。

 

「○△先生(上級医)、もう患者さんが手術室に入ってますけど・・・」と恐る恐る尋ねてみたところ、予想外の返事が返ってきました。

 

「はぁ?オレは手術に入れって何も聞いてないぞ。そんなの知らないよ」と、ぶっきらぼうに言われ、電話を切られてしまいました。

 

はあ? 何だそれ!?

これから研修医の初手術だというのに、それはないだろう!と呆れてしましました。

こういう時はボスの部長先生に連絡し、トップダウンで何とかしてもらうしかありません。

部長先生は外来診療中で大忙しのはずでしたが、事態が事態なのですぐに電話をかけて事情を話しました。

すると・・・

 

「あぁ、そんなこと言われたのか。まあ・・・それなら・・・アキラッチョ先生ひとりで頑張ってみなさい」

(ぷつっ!プーっ、プーっ、プーっ・・・)

 

と言われ、電話を切られてしまいました(笑)

 

(いやいや、笑えないよ!)

 

この状況を要約してみると、同じチームで働くお医者さん同士なんだけど、仲が悪くてお互いに連絡を取り合ってなくて、研修医の手術のことなんてほったらかしであった・・・ということになります。

しかし研修医になって数ヶ月の間、慢性硬膜下出血の手術には助手としてついた経験もたくさんあったのと、部長先生の許可が(一応)もらえたということもあり、自分一人で手術を開始することにしました。

今まで勉強してきた手術ノートで確認しながら、間違いのないように丁寧に初手術を行いました。

手術後、その患者さんはすぐに歩くことができるようになり、めちゃくちゃ感謝されて無事退院となりました。

 

やれやれ・・・。

 

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話を戻しますが、生きていれば「人生初」というものに必ず遭遇します。

チャレンジしたり努力して乗り越えていくかは本人次第になりますが、脳神経外科手術のような難しい「人生初」に対しても、やはり本人の気持ちが一番重要だと思います。

上司が指導してくれないからできないとか、やったことないから恐くてできないなど、人のせいにしたり臆病になったりする人もいますが、思い切ってやってみると何とかなるものです。

ある僕の上司の先生がいつも言ってた言葉があります。

 

0→1の壁を越えろ

 

今まで自分が経験したことのない難しい手術にもチャレンジして、その上できちんと結果を出して行こうという意味です。

”0”のままでは何を掛けても”0”のままで、手術をする人間として成長が止まってしまいます。

これは手術だけでなく、自分の人生においても大切な考え方だと思います。

脳神経外科医としてたくさんの手術にチャレンジして結果を出してきましたが、これからは他の分野でも「0→1の壁」を越える楽しみを探して行こうと考えています。(まずはブログの収益化かなw)

 

人生一回しかないので、何かに呪縛されて自由がきかない人生(=他人の人生)を過ごすなんて本当にもったいないです。

後悔しない、楽しい生き方を実践していきましょう ^ ^

 

それではまた!

 

健康