「病む」ということがどういうことなのかを教えてくれた小説—『神様のカルテ』夏川草介 ★★★
小学館 (2011-06-07)
売り上げランキング: 3,057
栗原一止は信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く、悲しむことが苦手な29歳の内科医である。職場は常に医師不足、40時間連続勤務だって珍しくない。
ぐるぐるぐるぐる回る毎日に、母校の信濃大学医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば最先端の医療を学ぶことができる。だが大学病院では診てもらえない、死を前にした患者のために働く医者でありたい……。
つい先日の話です。
近所のリサイクルショップに行った時に、古本コーナーで発売当初(2009年)から読みたいな〜と思っていた小説『神様のカルテ』を発見してしまいました。
古本価格は100円で、Amazonの古本価格(1円+配送料:257円)を大きく下回っていたので、即購入することにしました。
ちなみに僕は、新刊本の購入に関してはかなり慎重派です。
それは、出版されたばかりなのにミリオンセラーの本とか、新刊ランキング上位に入ってチヤホヤされている本の中にも、実際に買って読んでみたら完全にハズレ(読むに値しない本)だったという”苦い”経験を多くしているからです。
例えば2000円くらいの単行本であれば、600円の文庫本になるまで待ち、そしてその文庫本が古本になって流通し始めるまで3年くらい待つこともザラです。
それくらいの期間をかけて世の中で熟成させれば、その本を買ってでも読むべきか?という”真の価値”がわかるようになります。
僕は村上春樹の熱狂的なファンなのですが、今までの全ての村上春樹作品も、単行本が文庫本になって、その文庫本が古本になって、お手頃価格(Amazonで1円とか)になるのを待ってから購入しています。(単なるケチという説も?w)
***************
さて、この『神様のカルテ』ですが、現役医師が書いた小説ということだけあって、医療の現場がかなりリアルで正確に描かれています。
よくテレビでやっているような医療モノのドラマなんて「そんなはずないだろ〜!(笑)」って、失笑してしまう場面が多々ありますが、この作品にはそんな”ニセモノの茶番劇”はどこにも用意されていませんでした。
真のリアリティがあります。
作りものの医療ドラマのようなエンターテイメント性はありませんが、ボロボロになるまで働いている主人公の栗原一止の姿に、ついつい昔の自分の姿を重ねてしまい、グイグイと作品の世界へと引きずり込まれてしまいます。
そしてこの作品の中で最も印象に残ったのが、亡くなった癌患者さんからの手紙を主人公が見つけて読む場面です。
少々ネタバレになりますが、僕の心を大きく揺さぶったその手紙の内容を以下に紹介しようと思います。
病むということは、とても孤独なことです。
(中略)
病いの人にとって、もっとも辛いことは孤独であることです。先生はその孤独を私から取り除いてくださいました。たとえ病気は治らなくても、生きていることが楽しいと思えることがたくさんあるのだと、教えてくださいました。
僕もたくさんの患者さんや、そのご家族から手紙を頂きましたが、そのほとんどが「病気が治って嬉しいです!」という感謝の手紙ばかりです。
反対に脳の病気で亡くなる患者さんの多くは、意識の中枢である脳が障害を受けるため、最終的にはほとんど意識がなくなった植物状態になります。
でもそんな意識の無くなった患者さんも、もしかしたら「孤独」を感じていたのかもしれません。
「病む」=「孤独」
当たり前のようなことなのですが、果たして僕自身がこの「病む」=「孤独」を意識して、患者さんに接することができていたかどうかというと、恥ずかしながら(忙しすぎたせいもあって・・・)遠く及ばなかったかもしれません。
この作品に出会えたおかげで、終末期の患者さんにもしっかりと声をかけて、孤独や恐怖というものを取り除いてあげなければならないんだということに気がつかされました。
また、この『神様のカルテ』は映画化もされています。
櫻井翔さんと宮崎あおいさんが共演しているということもあり、こちらの方も合わせてぜひ観てみたいと思います ^ ^
売り上げランキング: 39,011
というわけで、主人公の栗原一止に負けないように、これからも地域医療に精一杯取り組んでいこうと思います。
医者がブログなんか悠長に書いてる暇なんてないですよね ^ ^
(ブログやめようかな・・・マジで)

それではまた!
スポンサーリンク