”若年性アルツハイマー病”の女性を描いた切ないラブ・ストーリー!『私の頭の中の消しゴム』木村元子 ★★★
私の頭の中には、消しゴムがある。かけがえのない、すべての記憶がなくなっていく。大切な思い出も、大好きなあなたの名前も、その顔も、すべて失ってしまう—。
28才のOLの私は、建築士を目指す彼と出会い、幸せな日々を過ごしていた。やがてふたりは、結婚。しかし、そんな時間は長くは続かなかった。
アルツハイマー。医師から告げられた病名は、想像もつかないものだった……。
ゴールデンウィーク中、とくに何もすることもなかったので、暇つぶしに近所の古本屋さんへと足を運びました。
そして、その古本屋さんで運よく遭遇することができたのが、普段は100円で売られている文庫本がゴールデンウィーク中に限って半額の50円という価格破壊セールでした。
「令和早々、めちゃラッキーだ!」と興奮してしまった僕は、文庫本の棚を一冊ずつ時間をかけて入念にチェックし、以前から読みたかった小説や話題になった作品を片っ端から大人買い(!?)したのでした。
その選んだ文庫本の中の一冊が、今回紹介する『私の頭の中の消しゴム』です。
この物語の主人公は28才で普通のOLをしている薫(かおる)です。
一級建築士を目指す浩介(こうすけ)との運命的な出会いから、二人は幸せな日々を重ね、そして結婚にいたります。
しかし、薫はすべてを忘れてしまい、自分が自分であることすらわからなくなってしまう「若年性アルツハイマー病」という恐ろしい病気を患ってしまい、徐々に記憶が失われていく日々の中で浩介と懸命に生きていく様子が描かれています。
日記形式で主観的に書かれている作品なので、主人公の気持ちや感情の変化、そしてまわりの人たちとのやりとりが、まるで自分のことのように感じられます。
そして徐々に病魔に侵されてゆく恐怖や不安、夫となった浩介への切ない思い、自分自身の存在、大切な両親、友人、元恋人の和哉の存在・・・
薄れゆく自我が途切れ途切れのテレビ番組のようになり、やがてすべてが失われてしまい、薫は浩介の前から姿を消してしまうのです・・・。
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薫が浩介に残した”最後の仕掛け”には、確実に涙腺が崩壊すると思います(泣)
そしてこの作品を読んでからは、もっともっと親身になって”認知症”の患者さんの治療に専念しようと思うようになりました。
(一応、認知症専門外来を仕事にしているので)
決してハッピーエンドではないかもしれませんが、そんなふうに感じさせない心温まる作品です。
Blu-rayやDVD化もされているようなので、「ぜひ、映像で観たい!」という方はこちらの方もご覧くださいね ^ ^
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それではまた!
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