「めまい」で悩まれている人は、日本全国で約240万人もいると推定されています。
この「めまい」という症状は、体のバランスを保つ機能に障害が生じることによって起こりますが、その機能を果たしている場所の一つが「耳」になります。
今回は「めまい」を起こす7つの耳の病気について、詳しく解説していきます。
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【目次】
なぜ”耳の病気”でめまいが起こるの?
耳は音を聞くだけでなく、体のバランスを保つ機能を果たしています。
体のバランス、すなわち平衡機能をつかさどっている部分は、鼓膜よりも奥にある内耳(ないじ)というところになります。
平衡機能に関与している内耳の器官は、次の3つが重要な役割を果たしています。
・耳石器(じせきき)
・三半規管(さんはんきかん)
・前庭神経(ぜんていしんけい)
まず「耳石器」ですが、別名は「前庭」と呼ばれており、重量や加速度を感知する器官になります。ここが障害されてしまうと、ふわふわと浮いたようなめまい感が起こります。
次に「三半規管」ですが、3つの半円形の管からできていて、お互いに90°の角度となっています。
三半規管の内側はリンパ液で満たされていて、体が動くことによってリンパ液の流れが変わり、どの方向へ体が動いているのかということを感知します。
この三半規管が障害されると、体が回転するようなめまいを起こします。
「前庭神経」は、耳石器と三半規管で感知された平衡感覚に関する信号を、脳幹へ伝える役割をする脳神経です。
この前庭神経が障害されると、強い回転性めまいを起こします。
これらの3つの器官の障害によって「めまい」が起こるのですが、それぞれの器官で少し異なった症状になります。
また障害の原因も様々なので、その原因についても紹介していきましょう。
めまいの原因となる7つの”耳の病気”
内耳にある「耳石器」「三半規管」「前庭神経」の3つの器官の障害によって「めまい」を起こすのですが、障害の原因となる代表的な耳の病気は7つあります。
それでは「めまい」の原因となる7つの耳の病気について、それぞれ解説していきましょう。
良性発作性頭位めまい症
めまいを起こす耳の病気で、最も多いのが「良性発作性頭位めまい症」です。
朝目が覚めて体を起こす時や、頭を動かしたりした時に、回転性めまいを起こすという特徴があります。
内耳の耳石器(前庭)から「耳石」という小さな石が剥がれ落ち、それが三半規管に入り込んでしまうことでめまいを起こします。
良性で発作性に起こるめまいで、頭の位置が変わるとめまいがひどくなることから、この名前がつけられました。
めまいの持続時間は数秒から数十秒程度で、すぐに治るので心配はありません。
メニエール病
回転性のひどいめまいが起こり、吐き気や嘔吐を伴うのが「メニエール病」です。
めまいと同時に耳鳴りや難聴を起こす患者さんもいます。
めまい症状は数十分から数時間続きますが、中にはまる一日めまいが続く患者さんもいます。
内耳の中を満たしている「内リンパ」という液体が増えすぎて「内リンパ水腫」を起こすことがメニエール病の原因と考えられています。
メニエール病は年に数回ほど繰り返すこともあり、病状が進行すると聴力低下を起こしてしまいます。
前庭神経炎
激しい回転性めまいと、吐き気・嘔吐が2〜3日続く場合は「前庭神経炎」が原因と考えられます。
前庭神経炎では、耳鳴りや難聴といった耳の症状は起こりません。
風邪をひいた後に起こることが多く、ウイルス感染などが原因で前庭神経に炎症が起こるのではないかと考えられています。
数日すればめまいは少しずつよくなってきますが、ふらつきが残るため、まっすぐに歩くことが難しくなります。
2〜3週間もあれば「めまい」はほぼ治るのですが、体を動かす時のふらつき感がしばらく続きます。
中耳炎
鼓膜のすぐ奥の「中耳」という場所で、細菌感染などが原因で炎症を起こすのが「中耳炎」という病気です。
この中耳炎が、中耳の奥の内耳まで拡がってしまうと、内耳の機能が障害されてめまいを起こすことがあります。
炎症が少しずつ拡がって行くため、めまい自体も急激に起こるものではありません。
ふわふわとするような浮動性めまいや、体のバランスをとることが難しくなる平衡機能障害といった、比較的軽いめまい症状になります。
突発性難聴
ある日突然、耳が聞こえにくくなる病気が「突発性難聴」です。
この突発性難聴の患者さんの約50%に「めまい」を起こすことがあります。
めまいが激しい場合には、難聴に気がつかないこともあります。
外リンパ瘻(がいリンパろう)
内耳の中を満たす液体には「内リンパ」と「外リンパ」の2つがあります。
そのうち「外リンパ」が内耳から中耳へ漏れて、内耳の生理的機能が障害されるのが「外リンパ瘻」と呼ばれる病気です。
外リンパ瘻の原因として、最も多いものが「外傷性外リンパ瘻」で、頭部を打撲したことがきっかけで、難聴や耳鳴り・めまいなどの症状を起こします。
自然に治る可能性がありますが、症状が悪化するような場合には手術を行うこともあります。
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
耳の神経である「聴神経」に腫瘍ができることがあります。
この腫瘍は「聴神経腫瘍」と呼ばれていて、難聴やめまいで発症することがあります。
聴神経腫瘍が大きくなると、顔面神経を圧迫して顔の麻痺症状が出たり、小脳や脳幹が圧迫されると、立位や歩行時のふらつきが出現します。
基本的には良性の腫瘍なので、小さなサイズのものであれば経過観察となりますが、徐々に大きくなる場合は、放射線治療や外科手術による治療が必要となります。
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まとめ
天井がグルグルと回るようなめまいや、自分自身が回転しているように感じる「回転性めまい」は、耳の病気が原因である場合が多いです。
しばらく安静にしていれば治ることが多いのですが、吐き気がひどかったり、難聴などの症状があれば、早めに耳鼻科を受診した方がよいでしょう。
また、めまいだけでなく「手足の痺れ」「呂律が回りにくい」「ものが飲み込みにくい」などの神経症状を合併するような場合は、脳卒中の可能性があるので緊急で頭部の検査をする必要があります。
めまいが続いてよくならない場合は、非常に稀な病気ですが「聴神経腫瘍」の可能性も考えなければなりません。
めまいはごくありふれた病気ですが、その陰には危険な脳の病気が隠れていることもあるので、くれぐれもご注意ください ^ ^
それではまた!