脳の病気には、似たような名前の病気や、意味がわかりにくい病気の名前がたくさんあります。
ある日、僕の外来にこんなおじいちゃんがやって来ました。
おじいちゃん:『先生、わしゃなー、頭の血管がつまってノーイッケツって言われたことがあるんや』
アキラッチョ:「えっ?血管がつまったんですよね??」
おじいちゃん:『あー、つまったんや。それってクモマッカか?』
アキラッチョ:「もしかして、くも膜下出血のことですか?」
おじいちゃん:「あー、それなあ・・・●※△◇◎・・・」
こんなやりとりが時々あります。
でも、仕方ないですよね?
しかし脳卒中に関して言うなら「血管がつまる」病気と「血管が切れて出血する」病気に大きく分かれます。
(また新しく「脳卒中」って言葉が出てきました・・・)
これら2つの病気は治療法が全く正反対になってしまうので、きちんとご自身の病気を把握することは、とても重要になります。
今回は身近な病気「脳溢血(のういっけつ)」を中心に、病気の名前のお話をしようと思います。
スポンサーリンク
【目次】
脳溢血(のういっけつ)とは?
まずタイトルにもなりました「脳溢血」ですが、その名前の通り「脳の中に血が溢(あふ)れる」病気です。
脳の中に血が溢れる病気は、次の2つになります。
・脳出血
・くも膜下出血
脳出血は、高血圧などが原因となって脳の中に出血する病気です。
またくも膜下出血は、脳の血管にできたコブ(脳動脈瘤)が破けることで、脳に出血を起こす病気になります。
これら2つの出血する病気は全く別の病態になりますので、現在では「脳溢血」と一言でまとめずに、「脳出血」と「くも膜下出血」にきちんと分けて病名をつけているのです。
すなわち「脳溢血(のういっけつ)」という病名は、もはや死語になりつつあるということです。
「脳卒中」を整理整頓してみます
それでは先ほど出てきた「脳卒中」とはどんな病気を意味するのでしょうか?
実は「脳卒中」とは「脳の血管の病気」を総称する名前になります。
脳の血管の病気を、全部まとめて「脳卒中」と呼んでいるのです。
パグ、チワワ、ゴールデンリトリバー、ダックスフンド、ブルドック・・・
これらを全部ひっくるめて「犬(イヌ)」と呼ぶようなイメージです。
この脳卒中は「脳の血管がつまる」病気と「脳に出血する」病気とに大きく分かれます。
それぞれを順番に説明していきます。
スポンサーリンク
脳の血管がつまる脳卒中
まず「脳の血管がつまる」脳卒中ですが、ちまたで聞くことのある脳の血管がつまる病気は次の3つがあります。
・脳梗塞(のうこうそく)
・脳血栓(のうけっせん)
・脳塞栓(のうそくせん)
この3つをきちんと使い分ける人は、医療関係者(しかも脳神経外科関係者)しかいません。
ズバリどのように分類されるかというと「脳血栓」と「脳塞栓」をまとめて「脳梗塞」と呼んでいます。
例えるなら
「しば犬」と「秋田犬」をまとめて「日本犬」と呼んでいるといった感じです。
脳血栓は、脳の血管が動脈硬化を起こして徐々につまっていくタイプの脳梗塞です。
一方、脳塞栓は心臓や首の血管から「血栓(けっせん)」と呼ばれる血液の塊が脳の血管に飛んでいって、つまってしまうタイプの脳梗塞になります。
同じように脳の血管がつまる病気ですが、実は治療する薬が全く異なる場合があるので、脳血栓と脳塞栓の診断をつけることは、非常に重要なのです。
脳に出血する脳卒中
「脳に出血する」脳卒中ですが、先ほど解説していた通り以前はすべて「脳溢血(のういっけつ)」と呼んでいました。
しかし、この「脳溢血」という言葉自体は死語となっており、脳に出血する病気は「脳出血」か「くも膜下出血」と呼ぶようになっています。
【まとめ】脳卒中をスッキリと分類してみます!
以上の説明を踏まえて、先ほどのおじいちゃんとアキラッチョのやりとりを訂正してみます。
おじいちゃん:『先生、わしゃなー、頭の血管がつまってノーイッケツ脳梗塞って言われたことがあるんや』
アキラッチョ:「えっ?血管がつまったんですよね??」
おじいちゃん:『あー、つまったんや。それってクモマッカか脳血栓か脳塞栓のことやろか?』
アキラッチョ:「脳梗塞のことすごくよくご存知ですね!!!」
おじいちゃん、素晴らしい!(笑)
最後にまとめとして、わかりやすく図にしてみました。
まず、以前の脳卒中の分類がどのようにされていたかというと、下図のようになります。
この図が、今回の記事を読んでいただき頭の中で次のように分類できれば100点です!
病気の名前って本当にややこしいですね。
きちんとわかりやすく説明してくれない病院の先生も悪いのですが(笑)
それではまた!