脳出血の手術はしなくてもいいの?手術適応について解説!

脳出血、脳梗塞、手術

 

脳出血を起こしたら、必ず手術になるわけではありません。

救急車で搬送されてきた脳出血の患者さんでも、薬と点滴だけの内科的治療で全く後遺症なく退院できる方もいます。

それでは脳出血はどんな時に手術になるのでしょうか?

今回は脳出血を起こした時の手術適応について、詳しく解説していきます。

 

スポンサーリンク

 

脳出血の手術はどんな時にするの?

脳出血の治療は「内科的治療」と「外科的治療」があります。

もちろん手術は外科的治療になりますが、手術をする必要がない脳出血もあります。

この「手術をする必要がない」ということを正確に表現すると、次のようになります。

 

・手術をしなくても大丈夫な ”小さい” 脳出血

・手術をしても助からないほどの ”大きい” 脳出血

 

全く正反対の脳出血になりますが、この2つの脳出血は手術にはならず、血圧管理など内科的治療を行うことになります。

このことは「脳卒中治療ガイドライン2015」に次のように書かれています。

 

脳出血の部位に関係なく、血腫量10ml未満の小出血または神経学的所見が軽度な症例は手術を行わないよう勧められる(グレードD)。

また意識レベルが深昏睡(Japan Coma Scale:JCSで300)の症例に対する血腫除去は科学的根拠がない(グレードC2)。

引用:「脳卒中治療ガイドライン2015」より

 

逆に、この条件以外の脳出血は手術をした方がよいということになります。

ただし意識レベルが深昏睡(しんこんすい)で非常に悪い状態でも、手術をすればよくなる可能性があれば、思い切って手術に踏み切る場合もあります。

手術をするかどうかは、その時の患者さんの状態や、医師の判断によるところも実際は大きいのです。

 

脳出血の手術適応

脳出血といっても様々な種類の脳出血があります。

各脳出血で、どのような場合に手術になるのか、手術適応についてそれぞれ解説していきます。

 

スポンサーリンク

 

被殻出血

被殻出血(ひかくしゅっけつ)」は、運動の調整を行うはたらきをもつ「被殻」と呼ばれる場所に出血します。

被殻出血は脳出血の中で最も多く、全体の約50%を占めています。

被殻出血の手術適応は次の通りです。

 

・出血の体積が31ml以上

・出血によって脳がかなり圧迫されている

・手足の麻痺などの神経症状が、それほど重症でない

 

ある程度の大きな被殻出血で、手術によって血腫の圧迫を取れば、残された運動神経を助けることができる場合に手術に踏み切ることが多いです。

またあまりにも大きな被殻出血で、手術をしなければ命が助からない場合も、「救命目的」で手術を行う場合もあります。

被殻出血を起こした患者さんの年齢や病状、そしてご家族の意向を汲み取って、手術をするかどうか最終的に判断することになります。

 

被殻出血、脳出血

※「被殻出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

視床出血

視床出血(ししょうしゅっけつ)」は、体の感覚を脳に伝える中継点の役割をしている「視床」と呼ばれる場所に出血します。

視床出血は脳出血の中で2番目に多く、全体の約30%を占めています。

 

視床出血を起こした時には、血腫を除去するような手術をすることは通常ありません。

視床出血が脳室の中に吹き出して「水頭症」を起こした場合のみ、「脳室ドレナージ術」と呼ばれる手術を行い、脳室に溜まった水を抜く処置を緊急で行います。

 

視床出血、脳出血

※「視床出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

皮質下出血

皮質下出血(ひしつかしゅっけつ)」は、脳の表面に近いところに起こる脳出血です。

出血する部位によって、様々な症状が現れます。

この皮質下出血の手術適応は次の通りです。

 

・脳表から深さが1cm以下の出血

・出血の体積が30ml以上

 

CTで見て、皮質下出血の直径が4cmくらいあれば手術になる場合が多いです。

皮質下出血は脳の表面から非常に浅いところで起こるので、手術はそれほど難しくはありません。

 

ただし、手術をしても出血によって壊されてしまった脳の機能が回復するわけではありません。

手術の目的は、出血を取り除くことで、周りの脳への圧迫を解除することになります。

あくまでも、残された脳の機能を守るための手術になります。

 

脳出血、皮質下出血

※「皮質下出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

小脳出血

小脳出血」は、運動機能の調整を行う小脳に出血を起こします。脳出血全体の約10%を占めています。

小脳のすぐ近くには生命活動を維持している「脳幹(のうかん)」と呼ばれる大切な部分があるので、小脳出血は”超”緊急手術になる場合が多いです。

小脳出血の手術適応は次の通りです。

 

・出血の直径が3cm以上

意識が悪くなってきている

・出血によって小脳が腫れて、水頭症を起こしている

 

3cmの出血であれば、体積にすると約14mlくらいになります。

他の部位の脳出血は30ml以上で手術になりますが、小脳自体すごく狭い入れ物の中に入っていて、しかもすぐ近くに脳幹という非常に大切な脳があるので、手術に踏み切るタイミングとしては他の脳出血よりもかなり早めになります。

手術の準備ができるまでに呼吸が止まりそうになる患者さんもいるので、手術をする前に人工呼吸器が必要になる場合もあります。

 

小脳、脳幹

※「小脳出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

脳幹出血

脳幹出血」は、生命活動を維持する働きをもつ「脳幹」に出血を起こす脳出血です。

脳出血の中で約10%と頻度は低いですが、重症度は最も高くなります。

 

脳幹出血の手術適応ですが、出血を除去するような手術は行われません。

脳幹には重要な機能が密集しているため、出血によって壊れた機能が回復する見込みがないためです。

 

脳幹出血の中でも、脳幹の外に向かって出血が吹き出すことがあります。

その吹き出した血腫のために水の流れが悪くなって「水頭症」を来しているような場合に限り「脳室ドレナージ術」を行います。

また出血源として次の病気が見つかれば、後日手術になることもあります。

 

海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)

脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)

 

ただし、脳幹の手術は非常に難易度の高い手術テクニックが必要になるので、手術をするかどうかについては慎重に検討する必要があります。

 

脳幹出血

※「脳幹出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

まとめ

脳出血の手術適応の基準については「脳卒中治療ガイドライン2015」によって明確に示されています。

しかし手術をした方がよい脳出血でも、患者さんの年齢健康状態によっては、手術をすること自体リスクが非常に高い場合も多々あります。

 

例えば、92歳のおじいちゃんで心臓や肺に持病があるような脳出血の患者さんの手術は、たとえ手術適応の基準を満たしていても、術者として(かなり)腰が引けてしまいます。

手術自体は問題なく行うことができても、手術中に呼吸機能が悪化して人工呼吸器から離脱できなくなったり手術中に循環動態が悪くなって心臓が動かなくなったりする可能性もあるからです。

生身の人間の体のことなので、ガイドライン通りにならないのは仕方ないことです。

 

最後に一言、脳出血の原因はズバリ!「高血圧」です。

やはり脳出血を起こさないためにも、日頃から血圧管理はきちんとしなければなりません。

今まで普通の血圧だったのに、気がついたら高血圧になっていた!という方も結構いるので、皆さんも気をつけてくださいね^ ^

 

それではまた!

 

高血圧、脳出血