脳出血の中でも、脳の表面に近いところに出血を起こすものを「皮質下出血」と呼んでいます。
この皮質下出血ですが、出血する部位によって様々な症状を起こします。
今回は皮質下出血の原因や症状、そして治療法などについて詳しく解説していきます。
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【目次】
皮質下出血とは?
脳の表面部分のことを「大脳皮質」と呼んでいますが、大脳皮質にはすごい数の神経細胞が集まっています。
この大脳皮質のすぐ下の部分が「皮質下」で、ここに脳出血を起こしたものを「皮質下出血」と呼んでいます。
脳出血の原因は「高血圧」が多いのですが、この皮質下出血には高血圧以外にも原因となる脳の病気が隠されていることがあります。
皮質下出血の主な原因を5つ挙げてみましょう。
・高血圧
・アミロイドアンギオパチー
・海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)
・脳腫瘍
・脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)
一つ一つの病気の詳しいお話は、今後のブログ記事でも解説していく予定ですが、ざっと見渡しても「脳腫瘍」という怖い病気が原因であったり、聞いたこともないカタカナの病気(アミロイドアンギオパチー)があったりして、バラエティーが豊富です。
原因もいろいろあるのですが、脳のどの部分に皮質下出血を起こすかによって、症状も全く違ってきます。
それでは皮質下出血の部位別症状について解説をしていきます。
皮質下出血の部位別症状4つ
大脳は次の4つに大きく分けることができます。
・前頭葉・・・前の方の脳
・側頭葉・・・横の方の脳
・頭頂葉・・・てっぺん側の脳
・後頭葉・・・後ろ側の脳
これらの4ヶ所の脳は、それぞれ異なった働きをしています。
したがって皮質下出血を起こすことによって、それぞれ異なった症状を起こします。
順に解説していきましょう。
前頭葉の皮質下出血
前頭葉は人の「精神活動」機能をつかさどっています。
また「運動機能」や「運動言語機能」も前頭葉の働きによります。
したがって皮質下出血により前頭葉の障害を受けると、以下のような症状が出現します。
・知能の低下
・自発性がなくなる
・人格変化
・手足の麻痺
・言葉が出にくくなる(特に左前頭葉の障害)
例えば、昨日まで頭がしっかりしていたおじいちゃんが、急に認知症みたいな症状を起こしたりする場合は、前頭葉の皮質下出血を考える必要があります。
側頭葉の皮質下出血
側頭葉は「聴覚」「嗅覚」「感覚言語」をつかさどっています。
また側頭葉の内側には「記憶機能」に関係している領域があります。
この側頭葉に皮質下出血を起こすと、次のような症状が出現します。
・感覚失語・・・言葉が理解しにくくなる
・記憶障害
・視野障害・・・視野に関する神経線維の障害が原因になります
言葉が理解しにくくなる「感覚失語」は主に左側の皮質下出血で起こります。
左の脳は「優位半球」と呼ばれており、言語に関係する神経が集まっている大切な脳なのです。
頭頂葉の皮質下出血
頭頂葉は「知覚機能」をつかさどっています。
したがって皮質下出血を起こすと「知覚障害」を中心に症状が起こります。
また、一連の動作ができなくなる「失行」や、周囲の状況がわからなくなる「失認」などの症状も起こります。
後頭葉の皮質下出血
後頭葉には「視覚」に関する中枢があるので、皮質下出血を起こすと「視覚障害」が起こります。
ものを見る目に障害が起こるのではなく、見たものを「見た」と判断することができなくなるのです。
後頭葉の障害では「同名半盲(どうめいはんもう)」と呼ばれる視野障害が起こります。
少し難しい話になるのでメカニズムについては割愛しますが、例えば左後頭葉の皮質下出血では、右同名半盲といって右側の視野がほとんど欠けて見えなくなります。
同様に、右後頭葉の皮質下出血であれば、左同名半盲を起こします。
同名半盲になると世の中が半分見えなくなるので、歩いていると電柱や他の人にぶつかったり、交通事故を起こすような危険も出てくるので注意が必要です。
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皮質下出血の治療法
皮質下出血の治療法は「内科的治療」と「外科的治療」のどちらかを選択します。
それぞれの治療法について解説していきます。
内科的治療
次にあげる条件を満たす場合は、手術ではなく「内科的治療」が選択されます。
・出血の量が少ない(10ml未満)
・麻痺や言語障害などの神経症状が軽い
・逆に「昏睡状態」であまりにも意識障害がひどい場合
まとめてみると「軽症」の場合と「超重症」に場合は内科的治療になります。
内科的治療の中心が「血圧管理」になって、目標血圧は140mmHg未満になります。
また脳の腫れを軽減する薬(グリセオール)の点滴治療も行います。
脳出血の血圧管理についての詳しい話は、以下の記事も参考にしてみてください。
外科的治療
皮質下出血に対する外科的治療は「脳卒中治療ガイドライン2015」に次のように記載されています。
皮質下出血:脳表から深さが1cm以下のものでは、特に手術の適応を考慮しても良い(グレードC1)。
引用:「脳卒中治療ガイドライン2015」より
要するに「ある程度の大きさの出血で、脳の表面から浅くて手術しやすい皮質下出血は、手術で出血を摘出してあげてもいいですよ」ということになります。
CTで見て出血の直径が4cmくらいあれば手術を考えます。
それよりも小さな出血であれば、自然に吸収されて出血がなくなるのを待った方がよいでしょう。
皮質下出血の手術はそれほど難しくありませんが、手術合併症のリスクのことを考えると内科的治療の方が結果としてよい場合もあります。
皮質下出血はどこまで回復するの?後遺症は?
皮質下出血は、他の種類の脳出血よりも症状が軽い場合が多いです。
よほどの大出血でない限り、命に関わるような状態にはなりません。
直径が3cm以下の小さな出血であれば、内科的治療のみで自然と吸収されて最終的には消えてなくなります。
しかし大脳の皮質には様々な機能が局在しているため、出血する場所によっては手足の麻痺や、言葉の障害などが後遺症として残ったりすることもあります。
どのような後遺症が残るかは、出血する場所次第というところがあります。
また皮質下出血に特徴的な後遺症としては「痙攣(けいれん)発作」があります。
出血が原因となってまわりの脳を刺激し、全身を硬直させてブルブルと痙攣する発作を起こします。
皮質下出血での痙攣の合併は15〜23%とかなり高い確率になります。
出血を起こした直後から痙攣をしている患者さんもいれば、元気になって退院した後で痙攣を起こす患者さんもいます。
その中でも、皮質下出血を起こした直後に痙攣発作があった患者さんでは、約30%に痙攣発作の再発が起こると言われています。
この場合はたとえ痙攣発作が治まっていても、予防的に抗てんかん薬を飲んでおいた方がよいでしょう。
主治医の先生と相談して適切な治療を選択し、再出血の予防も心がけていく必要があります
それではまた!