脳出血

脳出血手術のすべて!4つの手術方法について解説

手術、脳出血、脳梗塞

 

脳出血を起こして救急搬送されてくる患者さんの中には、緊急で手術をしなければ助からない方がいます。

しかし中には緊急で手術をしなくてもよい脳出血もあります。

この違いはなんなのでしょうか?

今回は脳出血の手術方法4つについて、どのような場合にその手術方法を選択するのかも含めて詳しく解説していきます。

 

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【目次】

脳出血手術の種類

脳出血の手術には主に4つの手術方法があります。

全身麻酔で行う手術や、局所麻酔で簡単にできる手術など、脳出血の場所やサイズによってそれぞれの手術方法を選択します。

それでは具体的な手術方法や適応などについて詳しく解説していきましょう。

 

開頭血腫除去術

開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)とは、その名前の通り「」を「」いて血の塊である「血腫」を除去する手術になります。

脳出血の部位にもよりますが、この開頭血腫除去術を選択する時の共通点を挙げてみます。

 

大きな脳出血

意識が悪い

・血腫を除去しないとが助からない

 

要するに、手術で血腫を取り除かないと命が助からない場合に行う緊急手術なので、一番の目的は「救命」ということになります。

 

手術の方法ですが、まず全身麻酔で患者さんに眠ってもらい、頭を固定する器械をつけて手術がしやすい位置で固定します。そして出血のある部分を中心に頭の皮膚をメスで大きく切ります。

皮膚をめくると(生々しいですが続けます)頭蓋骨が出てくるので、その頭蓋骨にドリルで何ヶ所か穴をあけます。

その穴をつなげるように切って頭蓋骨をパカっと外すと脳を覆う「硬膜(こうまく)」という硬い膜が現れます。この硬膜を切って開くと、その下からきれいな肌色をした脳の表面が出てくるのです。

 

この辺りから顕微鏡が登場します。

顕微鏡で術野を拡大して見ながら正常な脳を分けていくと、血腫(脳出血の本体になる血の塊)に到達するので、色々な道具を使って除去します。

血腫をすべて除去したら、周りの出血をきちんと止めて閉創にかかります。

外した頭蓋骨はチタン製のプレートなどで固定し元に戻しますが、脳出血があまりにもひどくて脳が腫れている場合は、頭蓋骨を外したままにして高い圧が外に逃げるようにすることもあります。

そして皮膚の下に血が溜まることがあるので、その血液を抜くためのチューブを入れておきます。

 

血腫の周りの脳はダメージを受けていて正常な機能が残っていないことが多いですが、手術で深追いしすぎると大事な(目に見えないような)神経線維を痛めてしまう可能性もあるので、術者の技量が問われます。

 

医師、手術

 

神経内視鏡手術

神経内視鏡手術も、開頭血腫除去術と同じで血腫を取り除く手術になります。

内視鏡手術では頭蓋骨を小さくあけて、そこから内視鏡と呼ばれるカメラを血腫のところまで進め、モニターで確認しながら血腫を吸引除去します。

 

開頭手術と比べても手術時間が短くて、患者さんの体力的な負担も少なくてすみます。

しかし神経内視鏡手術は特殊な技術と内視鏡カメラが必要なので、限られた施設でしか行うことができないのが現状です。

内視鏡手術は侵襲が低い手術なので、脳出血の手術は全て内視鏡で行う時代がくるかもしれません。

 

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定位的血腫除去術

定位的血腫除去術は、局所麻酔で行うことができる血腫除去術です。

頭に金属のフレームをつけてCT検査を行い、血腫の位置を決定します。

そして頭皮に局所麻酔を行なって3cmほど皮膚切開をし、頭蓋骨に一ヶ所だけドリルで穴を開けます。

その穴から血腫を吸引するための細い管を刺入し、血腫を洗浄吸引するといった手術になります。

次に挙げるような場合に、定位的血腫除去術を行います。

 

・緊急で手術をしなくても、命に関わらない脳出血

・比較的、大きいサイズの脳出血

・血腫を除去すれば、手足の動きが良くなる可能性のある脳出血

 

まとめると、緊急で手術しなくても命に関わることはないけど、血腫を除去してあげれば少しは症状が回復する可能性のある脳出血に対して、定位的血腫除去術を行います。

一番の適応となる脳出血は「大きめサイズの被殻出血」になります。

全く手足が動かなくなったような被殻出血でも、定位的血腫除去術で血腫を抜いてあげると、血腫による圧迫が軽減して麻痺症状が改善する患者さんもいます。

ただし、出血した直後は血腫が非常に硬くて吸引できないので(逆に無理をすると余計に出血がひどくなることもあるので・・・)、出血してから数日後に定位的血腫除去術を行うことが多いです。

 

※「被殻出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

脳室ドレナージ術

視床出血を起こした時に、脳室と呼ばれる水の溜まったところに出血が吹き出して水が流れなくなってしまうと、「水頭症」と呼ばれる頭の水がどんどん溜まってしまう病気になります。

この溜まっていく水を抜いてあげる手術が「脳室ドレナージ術」で、この手術も局所麻酔で行うことができる手術です。

 

まず頭皮に局所麻酔を行い、メスで3cmほど皮膚切開を行います。

そして頭蓋骨にドリルで一ヶ所穴を開け、そこから脳室に向かってチューブを入れてあげるシンプルな手術です。

水頭症で溜まっていく脳脊髄液という水が抜けるだけでなく、脳室の中に吹き出した血腫も一緒に抜けて一石二鳥ですが、以下の3点には注意が必要です。

 

・血腫でチューブがつまってしまうことがある

・長い期間留置していると、細菌感染を起こしてしまう

・無意識で患者さんが、チューブを抜いてしまうことがある

 

チューブが閉塞したり感染を起こしてしまうと、入れ替えの手術をしたり、場合によっては早めに抜去して様子を見ることもあります。

また患者さんが無意識でチューブを抜いてしまうと危険なので、場合によっては両手が動かないように抑制しなければなりません。

治療上ドレナージチューブを留置しておくことが必要な時期は、かわいそうですが患者さんには頑張ってもらわなければなりません。

 

※「視床出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

まとめ

脳出血の4つの手術について解説してきました。

どの手術方法を選択するかという点に関しては、脳外科の先生によってそれほど違いはありません。

しかし手術をした方がいいかもしれないし、しなくても大丈夫かも・・・というような脳出血の患者さんの時は本当に悩みます。

特に高齢者の脳出血患者さんや、血液をサラサラにするような薬を飲んでいるような患者さんは、手術自体リスクが高くなるのでなおさら悩みます。

手術をしなくても大丈夫と判断した後で、出血が大きくなってきて結局手術になった患者さんもいれば、手術をしたことによって状態がさらに悪くなってしまうような患者さんもいます。

 

「やっぱり(手術)しとけばよかったかもなあ・・・」

 

 と思ってしまうこともあれば

 

「やっぱり(手術)しなければよかったかもなあ・・・」

 

 と思ってしまうこともあります。

 

どんな脳出血であれば手術をするべきかということは「脳卒中治療ガイドライン」で明確に決められていて、基本的にはその基準に従って手術治療を選択するのですが、その判断すべてが最良のものになるわけではありません。

 

また手術をして救命できたものの、意識が全く回復せずに植物状態となってしまう患者さんもたくさんいます。

チューブや点滴、人工呼吸器などにつながれて、ただ生かされているだけの患者さんのご家族が、次のようにつぶやくこともあります。

 

「こんなになるんだったら、手術をせずに楽にしてあげればよかった・・・」

 

倒れたばかりの患者さんを目の前にして、命を助けるかどうかを問われたら、やはり「助けてください!」ということになります。

また手術をする医者側の心の葛藤もあるので、そのギリギリの現場ではさらに判断が難しくなります。

 

以前勤めていた脳神経外科専門病院の上司がよく言ってました。

 

「アキラッチョ先生、手術ってものはな・・・迷ったらGO!なんだよ」

 

そうなんです。

治療を提供する側のお医者さんが迷うわけにはいかないんです。

 

最近の世の風潮で患者さんに治療法を選択していただくということが強く言われています。

そのためか、医療の知識が全くない患者さんに、「治療A」にしますか?それとも「治療B」にしますか?自分のことなので、自分の責任でどちらか決めてくださいね・・・って冷たく言う病院の先生も中にはいます。

自分の体のことなので、自分の責任といえばそれまでなのですが・・・

僕はある程度、病気の知識を持った医師の責任で、治療の方向性を決めてあげるってことが大切じゃないのかな〜って考えています^ ^

 

それではまた!

 

医師、脳出血

 

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