くも膜下出血

くも膜下出血の手術!「脳動脈瘤クリッピング術」ってどんな手術?

くも膜下出血、クリッピング術

 

くも膜下出血を起こした時は、突然の激しい頭痛に襲われます。

ひどい場合は意識がなくなってしまい、救急車で病院に搬送されることになります。

このくも膜下出血の治療の中で、最も代表的なものが「脳動脈瘤クリッピング術」です。

今回は、この脳動脈瘤クリッピング術についてのお話になります。

手術中の写真が出てくるので、”血”とか”脳ミソ”が苦手な方は「そこそこ笑える記事」の方へ逃げてください!

 

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【目次】

くも膜下出血の3つの原因

人間にとって最も大切な臓器「脳」ですが、外側から順番に「硬膜(こうまく)」「くも膜」「軟膜(なんまく)」という3つの膜によって保護されています。

くも膜下出血はその名前の通り、二層目の「くも膜」の下に出血を起こす病気です。

このくも膜下出血を起こす原因は、次の3つのものが代表的な原因になります。

 

脳動脈瘤

脳動静脈奇形

頭のケガ(外傷性くも膜下出血)

 

この中で圧倒的に多い原因が「脳動脈瘤」の破裂によるものです。

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血の治療法は、主に3つあります。

この3つの治療法を紹介していきましょう。

 

くも膜下出血の3つの治療法

くも膜下出血の治療法ですが、主なものは次の3つになります。

 

脳動脈瘤クリッピング術

コイル塞栓術(カテーテルによる治療)

保存的治療(手術ができない場合)

 

正確に言えば、脳動脈瘤を止血剤などで包んで再破裂を予防する「動脈瘤被包術」(コーティング術、ラッピング術)や、動脈瘤が発生している血管を根元から遮断してしまう「動脈瘤近位部閉塞術」などもあります。

しかしこれらの治療は、きちんとした処置ができず、やむを得ない場合に限って行う方法です。

 

破裂した動脈瘤をきちんと治すことができる治療は「脳動脈瘤クリッピング術」と「コイル塞栓術」の2つなのです。

最近では”切らずに治す”ことができる「コイル塞栓術」を行う脳外科の先生も増えてきていますが、脳動脈瘤を完全に根治させるという点では、やはり「クリッピング術」の方が優れているように思います。

脳神経外科医のバイブル「脳卒中治療ガイドライン2015」でも、次のように推奨されています。

 

動脈瘤直達手術は、専用のクリップを用いた脳動脈瘤頚部クリッピング術(ネッククリッピング)を行うよう強く勧められる(グレードA)。

 

脳動脈瘤の”頚部”とは、いわゆる”首根っこ”にあたる部分になります。

この脳動脈瘤の首根っこの部分を、クリップというものを用いて遮断する治療が「脳動脈瘤クリッピング術」になります。

それではいよいよ本題の手術に入りましょう!

 

※「血」とか「手術の写真」がニガテな方は、こちらの記事へ避難!→

 

くも膜下出血の手術!脳動脈瘤クリッピング術ってどんな手術なの?

それでは実際の手術を紹介していきます。

患者さんは50歳代の女性です。

一家団欒中に、突然の激しい頭痛を訴えて救急搬送されました。

搬送された時には話もできていたのですが、ストレッチャーの上で血圧などのバイタルサインを測定していたら、突然意識が悪くなり昏睡状態となってしまいました

 

脳のCT検査をしたところ、くも膜下出血を認め、原因は右中大脳動脈瘤の破裂ということがわかりました。

この患者さんは、来院直後に脳動脈瘤が再破裂しており、緊急手術が必要な状態になってしまいました。

 

全身麻酔をかけて、右の頭の頭蓋骨を外しました。

脳の表面を観察したところ、くも膜下出血で真っ赤になっています。

 

くも膜下出血、クリッピング術

 

顕微鏡で観察しながら、脳の表面を覆うクモ膜を切り開き、前頭葉と側頭葉の間の「シルビウ裂」という隙間をていねいに開いていきます。

 

くも膜下出血、クリッピング術

 

脳の表面はくも膜下出血で血まみれになっています。

この血液を生理食塩水できれいに洗いながら、正常な血管や脳の表面を確認していくのです。

 

くも膜下出血、クリッピング術

 

これは吸引管2本を使った”ダブルサクションテクニック”という技です。

この技によって、くも膜下出血をものすごくキレイに(かつ安全に)洗浄吸引することができます。

くも膜下出血をできるだけキレイに洗うという処置は、のちに心配される「脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)」と呼ばれる重篤な合併症の予防につながります。

 

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どんどん術野を展開すると、側頭葉に頭を突っ込んだ「右中大脳動脈瘤」が確認されました。

しっかり洗浄したので、血に埋もれていた血管や脳動脈瘤がキレイに姿を見せていて、クリッピングがしやす状態になっています。

 

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クリップ」と呼ばれる道具を使って、脳動脈瘤の根っこの部分を遮断し、血液が脳動脈瘤に二度と流入しないようにします。

脳動脈瘤が破れないように、慎重にクリップをかけています。

 

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ばっちり脳動脈瘤にクリップがかかりました!

これでほぼ大丈夫なのですが、奥側のところに少し遮断しきれていない部分があったので、もう一本クリップをかけることにしました。

 

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脳動脈瘤が複雑な形をしているものもあり、一本のクリップだけではきちんと処置できない場合が多いです。

 

後日談ですが、このくも膜下出血の患者さんは術後経過も良好で、後遺症なく”笑顔”で歩いて自宅退院されました

今でも元気に生活されていると思います ^ ^

 

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まとめ

くも膜下出血の原因は、脳動脈瘤の破裂です。

この破裂した脳動脈瘤を治療するのは、今でも「脳動脈瘤クリッピング術」がゴールドスタンダードな治療法になります。

 

頭を切らずに治療する「コイル塞栓術」という”カテーテル治療”もありますが、巨大な脳動脈瘤や、血栓化したような脳動脈瘤、そして脳の血管自体が膨らんでオバケのように大きくなった脳動脈瘤に対しては、とても太刀打ちできません

破裂した脳動脈瘤をきちんと治すためには、やはりクリッピング術の方が絶対に優れていると思います。

 

いずれにしても、くも膜下出血にならないように気をつけなければなりません。

くも膜下出血を心配される方(心配じゃない方はいないと思いますが・・・)は、以下の記事を参考にして頂ければ幸いです ^ ^

 

※「くも膜下出血の予防」の話はこちらの記事へ→

 

それではまた!

 

くも膜下出血、クリッピング術

 

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