めまいがするということで脳の病気が心配となり、脳神経外科を受診する患者さんは少なくありません。
めまいがあまりにもひどい場合は、自分で動くことができなくなるため、救急搬送される患者さんもいます。
この「めまい」という症状ですが、実は3種類もあることをご存知でしょうか?
今回は異なる3種類にめまいについて、その特徴的な症状や原因などわかりやすく解説していきます。
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【目次】
めまいは3種類ある!
「めまい」という症状は、体のバランスを保つ機能に障害が生じることで起こります。
めまい症状を自覚している人は、なんと日本全国で約240万人もいると推定されています。
体のバランスを保つ役割をはたしている人体の器官は、三半規管、前庭神経、脳幹などさまざまですが、これらの器官のどこに障害が起こっても、めまいが起こります。
そしてこの「めまい」は、次に挙げる3つの種類にわけることができます。
・回転性めまい
・浮動性めまい
・立ちくらみのようなめまい
これら3種類のめまいですが、ほとんどの患者さんで区別されていないことが多いです。
脳神経外科の外来では、次のような感じでめまいの患者さんが受診されます。
患者さん「先生、昨日からめまいがするんや」
アキラッチョ「めまいって、どんな感じのめまいですか?」
患者さん「どんな感じって・・・めまいって言うたらめまいやないか」
アキラッチョ「例えばクルクル回るとか、フワフワするとか・・・」
患者さん「うーん、そんなん言われてもよーわからんなあ」
アキラッチョ「・・・」
とまあこんな感じです。
このありふれた「めまい」という病気ですが、実は危険な脳の病気が隠れていることがあります。
それでは3種類のめまいについて、それぞれ詳しく解説していきましょう。
回転性めまい
「回転性めまい」は、自分自身がグルグルと回っているような感じになったり、周りの景色がグルグルと回って見えるようなめまい症状を起こします。
まさに回転するような感じです。
脳神経外科を受診される患者さんは、次のように言われることが多いです。
・朝起きて目を開けたら天井がグルグル回っていた
・床に落ちたものを拾おうとしたら急にめまいが起こった
・ベッドから起き上がろうと思ったら急にめまいが始まった
目を開けるとめまいがして気分が悪くなるので、目を開けることができなくなる患者さんもいます。
またこの回転性めまいには、以下のような特徴があります。
・突然発症する
・吐き気がする(嘔吐する場合もある)
・頭の向きを変えると、めまいがひどくなる
・耳が聞こえにくいなど、耳の症状を伴う
この回転性めまいは、耳の異常が原因で起こります。
正式な病名は「良性発作性頭位めまい症」とよばれていますが、病名の通りで「良性」で「発作性」にめまいが起こり、「頭位」すなわち頭の位置を変えると、めまいがひどくなるといった特徴があります。
ほとんどの患者さんは数分から数十分でめまいは治りますが、中にはめまいがひどくて嘔吐して入院になる患者さんもいらっしゃいます。
もし入院になっても、翌日にはスッキリめまいは治ってしまうので、普通に退院することができます。
「めまいが起こった時は、本当に死ぬかと思った・・・」
良性発作性頭位めまい症の患者さんは、めまいが治った時にこのように言われることが多いです。
回転性めまいは、耳の障害で起こる一時的なめまいなので、決して慌てず目をつむって安静にしてみましょう。
もし回転性めまいが治らなければ、耳鼻科を受診することをお勧めします。
浮動性めまい
「浮動性めまい」は船に乗った時のように、体がフワフワしてふらつく感じがするめまいです。
この浮動性めまいが起こると、体がゆらゆらしてまっすぐ歩くことができなくなり、姿勢を保つことが難しくなります。
浮動性めまいの原因ですが、ズバリ「脳の病気」であることが多いです。
めまいだけでなく、次に挙げるような症状を伴う場合は注意が必要です。
・手足や顔にしびれ感がある
・呂律が回りにくい(構音障害)
・ものが飲み込みにくい(嚥下機能障害)
これらの症状を伴う浮動性めまいは、脳梗塞や脳出血、また耳の神経に発生する聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)を考えなければなりません。
命に関わるような脳の病気の可能性もあるので、すぐに神経内科や脳神経外科を受診する必要があります。
立ちくらみのようなめまい
3つ目は「立ちくらみのようなめまい」です。
特徴としては次のようなものがあります。
・立ち上がった時にクラっときたり、フラフラする
・目の前が真っ暗になる
・気を失う(失神)
この「立ちくらみのようなめまい」は特に高齢者に多いです。
原因としては、次のものが挙げられます。
・自律神経機能低下
・不整脈
・低血圧
・貧血
高齢者になると自律神経機能が低下しするため、血圧の調整が難しくなります。
特に排尿・排便をしたり、急に立ち上がったりすると、突然血圧が下がって「めまい」を起こす高齢者の方がいます。(「迷走神経反射」といいます)
また不整脈など心臓の病気のある方は、心臓のポンプ機能がきちんと働かないことによる脳貧血症状でめまいを自覚する場合があります。
もちろん血圧の低い人や、貧血のある患者さんも、脳貧血症状によるめまい感を自覚します。
この「立ちくらみのようなめまい」は、耳の検査や頭の検査をしても、何も異常が見つかりません。
むしろ、血液検査や心電図検査など行うことにより、全身性の異常の発見に務める必要があるのです。
気がつかない間に胃ガンや大腸ガンができていて、そこからじわじわと出血することによって貧血になる方もいます。
めまいがあるということで受診された患者さんが、実は大腸ガンからの出血が原因だったということもあるので、めまいにはくれぐれも注意が必要です。
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まとめ
今回は3種類の異なる「めまい」について解説してきました。
耳の障害が原因で起こる「回転性めまい」は、基本的には経過観察をしていても治ります。
めまいや吐き気がひどい場合には、点滴や飲み薬による治療を行いますが、基本的には必ずよくなります。
「浮動性めまい」を起こした時は、危険な脳の病気が原因となっている可能性があります。
手足の痺れ、呂律が回らない、飲み込みが悪いなどの症状が合併しているような場合は、緊急で脳の検査を行う必要があります。
最後は「立ちくらみのようなめまい」ですが、このタイプのめまいも決してあなどれません。
単なる立ちくらみだろう?って思っていたら、貧血を起こすような消化器ガンが原因となっていることがあります。
「めまい」という症状には、くれぐれもご注意ください ^ ^
それではまた!