「痛み止めの薬を毎日飲んでいるのに、頭痛が全然よくならないんです・・・」
このような悩みを抱えている患者さんは「薬物乱用頭痛」の可能性が高く、アキラッチョの頭痛外来にも薬物乱用頭痛の患者さんが時々来られます。
「頭痛薬」はドラッグストアやインターネットで簡単に手に入れることができます。
そのため頭痛薬を飲みすぎることでかえって頭痛が悪化してしまう薬物乱用頭痛を起こす人が後を絶ちません。
今回はこの薬物乱用頭痛について、原因や治療法をわかりやすく解説していきます。
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【目次】
薬物乱用頭痛ってどんな「頭痛」なの?
「薬物乱用頭痛」とは、頭痛持ちの患者さんが痛み止めの薬を飲みすぎることで、かえって頭痛を起こす頻度が多くなった状態のことをいいます。
薬物乱用頭痛はすべての頭痛の中で、緊張型頭痛・片頭痛に次いで3番目に多い頭痛になります。
男女比は1:1.35とやや女性に多く、特に中年女性の方に多い傾向があります。
次に挙げる症状の当てはまる人は、薬物乱用頭痛の可能性があります。
✔︎ 月に15日以上、頭痛に悩まされている
✔︎ 月に10日以上、頭痛薬を飲んでいる
✔︎ 朝起きた時から頭痛がする
✔︎ いつも飲んでいる頭痛薬が効かなくなってきた
✔︎ いくら頭痛薬を飲んでも、頭痛が前よりひどくなってきた
✔︎ 頭痛の程度、性質、場所が変化することがある
✔︎ 月に数回、片頭痛が起こっていた
いかがでしょうか?
当てはまる項目が多いほど、薬物乱用頭痛の可能性が高くなります。
薬物乱用頭痛は市販されている頭痛薬だけでなく、病院で処方される頭痛薬の飲み過ぎでも起こります。
薬物乱用頭痛を起こす原因となる頭痛薬は、主に次の3つの製剤になります。
・非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)
ロキソニン、ボルタレン、バファリン、カロナール、イブ、ノーシン、セデスなど
・トリプタン製剤(片頭痛の薬)
イミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージ
・エルゴタミン製剤(片頭痛の薬)
クリアミン、ジヒデルゴッド
病院で医師に処方してもらった薬だからといって、安心はできません。
薬物乱用頭痛のメカニズム
それでは薬物乱用頭痛はなぜ起こるのでしょうか?
本来なら頭痛を止める薬なのに、頻回に飲むことによってなぜ頭痛を誘発するのか、詳しいことはわかっていません。
次に挙げる2つのメカニズムではないかと考えられています。
① 痛みを感知する神経が敏感になって「弱い痛み」を「強い痛み」と感じてしまうようになる。
② 片頭痛を抑える働きのあるセロトニンという物質が、枯渇して頭痛を起こしてしまう。
頭痛薬を飲み過ぎれば、誰でも薬物乱用頭痛になるわけではありません。
薬物乱用頭痛の素因のある人が、原因となる頭痛薬を飲みすぎることで起こるのです。
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薬物乱用頭痛はどうやって治すの?【3つの治療方針】
薬物乱用頭痛って「薬物中毒」みたいな病気で、もう治らないのかな・・・?
ということは絶対にありません!!
適切に治療をすればきちんと治ります。
薬物乱用頭痛に対する3つの治療方針について解説していきます。
1. 原因となっている薬を中止する
まずは「原因となっている頭痛薬を中止する」ことから始まります。
そんなことをしたら頭痛に耐えられないよ・・・という気持ちはわかります。
しかし薬物乱用頭痛を克服するためには避けて通れません。
思い切ってやめてしまわないと、頭痛の回数や強さはひどくなる一方です。
原因となっている薬を中止すれば必ず治る!と信じて、まず第一歩を踏み出す必要があります。
2. 原因薬物中止後に起こる頭痛への対処
薬物乱用頭痛の原因となっている頭痛薬を中止すると薬物乱用頭痛は治りますが、元々悩んでいた頭痛の症状が表に現れてきます。
その時点で医師に頭痛のタイプをきちんと診断してもらい、適切な頭痛薬を処方してもらうことになります。
元々の頭痛の診断が間違っていれば、その頭痛に合った薬に変えなければなりません。
また同じ片頭痛でも、片頭痛の薬は5種類もあるので、その人に合った薬を考えてもらうことも必要になります。
イミグランが効かなくても、アマージがすごく効くという感じです。
コーヒーに例えるならエスプレッソは飲めないけど・・・キリマンジャロは美味しい!みたいな。
頭痛外来をしていて、そんな印象をいつも受けます^ ^
3. 予防薬の投与
原因となる頭痛薬を中止すれば、元々の頭痛が表に出てきます。
変更した薬の効果が現れるまで、その頭痛で苦しむことになるかもしれません。
その頭痛を和らげて、回数を減らすために以下の予防薬を内服することになります。
・デパケン®︎・・・抗てんかん薬
・インデラル®︎・・・血圧を下げる薬(狭心症や不整脈にも使用)
・トリプタノール®︎・・・憂鬱な気分を和らげる薬
・トピナ®︎・・・抗てんかん薬
頭痛乱用頭痛をわずらった期間にもよりますが、以上説明してきた治療を行えば早い人なら約1週間で治ります。
あきらめずに頑張って治療しましょう!
薬物乱用頭痛の再発を予防するためにできること
なんとか薬物乱用頭痛を治せても、残念ながら約30%の人に再発します。
再発してしまうと頭痛で苦しむばかりでなく、薬にかかるお金もばかになりません。
薬物乱用頭痛の再発を予防するために、まずは市販の頭痛薬をやめることが必要です。
頭痛薬は医師が処方してくれたものだけにしなければなりません。
屯服の頭痛薬であれば、服用するのは月に10回以内にしましょう。
また頭痛が起きた日や時間、程度、飲んだ薬などを「頭痛日記」に記録する習慣をつけてみましょう。
ご自身の頭痛のタイプをきちんと把握し、また担当の医師にも見てもらうことで、適切な頭痛治療を受けることができるようになります。
薬物乱用頭痛の患者さんが一人でもよくなっていただけるよう、僕も日々頑張っています。
頭痛薬の正しい知識を身につけて、薬物乱用頭痛を絶対に克服しましょう!
それではまた!