「脳出血」は脳内の細い血管が破れて、脳の中に出血を起こす病気です。
原因は「高血圧」が最も多く、脳出血全体の82%を占めることがわかっています。
男女比は約6:4で男性に多く、年齢が高齢であるほど出血のサイズは大きくなる傾向があります。
今回は脳出血という病気をまとめてみます。
お医者さんに言われた病名がわからない方、実際に脳外科診療に携わっているコメディカルの方、患者さんに病状しても難しい話しかできない脳外科の先生(笑)・・・ぜひ参考にしてみてください!
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【目次】
脳出血の種類
脳出血を起こす部位を頻度の高い順に並べると①被殻、②視床、③皮質下、④脳幹、⑤小脳の順になります。
それぞれの部位の脳出血について簡単に解説します。
※もっと詳しい話は、出血の名前をクリックしてみてください^ ^
被殻出血
運動の調整を行なっている被殻(ひかく)に出血します。
被殻のすぐ内側に運動神経が通過しているため、出血によって手足の麻痺症状が出ることがあります。
視床出血
体の感覚を脳に伝える中継点になる視床(ししょう)に出血します。
手足の麻痺症状だけでなく、ひどい出血の時は意識が悪くなって寝たきりになってしまうことがあります。
皮質下出血
脳の表面に近いところに出血を起こすのが皮質下出血です。
同じ皮質下出血でも、出血する部位によって全く異なる症状が出現します。
脳動静脈奇形(AVM)からの脳出血
高血圧のない若い人が脳出血を起こした時は、脳動静脈奇形の可能性が高くなります。
再出血すると命の保証はありません。手術は超難しいです!
脳幹出血
生命活動を維持するために最も重要な働きをしている脳幹(のうかん)に出血します。
出血が大きければ「脳死」状態になる患こともある最も危険な脳出血です。
小脳出血
運動機能の調整を行なっている小脳に出血します。
脳外科手術の中でも超緊急手術になることが多く、油断できない脳出血の一つです。
「脳溢血(のういっけつ)」って何ですか?
脳溢血って血管がつまる病気なのでしょうか?それとも血管が切れる病気なのでしょうか?
今や死語になりつつある脳溢血ですが、正体は脳に出血する病気の総称です。
脳出血の検査・治療
脳出血を調べる検査は、緊急性が必要とされるためCTになります。
脳出血の場所やサイズによって、治療は「内科的治療」と「外科的治療」を使い分けます。
脳出血の部位に関係なく、10ml未満の小さな出血の時や、麻痺症状などが軽い場合は手術を行いません。
また脳出血がひどすぎて、患者さんが深昏睡(痛み刺激で反応なし)の場合も手術にならないことがあります。
脳の検査:CTとMRIの違いについて
脳出血を調べる検査は、緊急性が必要とされるためCTが優れています。
ちなみにMRIは、主に脳梗塞や脳腫瘍を調べる時に行う検査になります。
脳出血手術のすべて
脳出血の手術には①開頭血腫除去術、②神経内視鏡手術、③定位的血腫除去術、④脳室ドレナージ術があります。
出血部位や血腫のサイズなどで、適した手術方法を選択します。
脳出血手術の適応
脳出血はすべて手術になるわけではありません。
それぞれの出血部位における手術適応は「脳卒中治療ガイドライン」によって明記されています。
脳出血の内科的治療(血圧管理)
脳出血を起こした時は、血圧を下げて再出血を予防しなければなりません。
血圧の目標値は上の血圧で140mmHg以下になります。ガイドラインの大幅な改正がありました!
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脳出血の合併症・予防法
脳出血を起こした時は、脳だけでなく思わぬ全身性の合併症を起こします。
この合併症のために命を落とす患者さんもいます。
脳出血の全身性合併症
重症の脳出血を起こした時は、体が不自由になってしまいベッド上での生活を余儀なくされます。
この重症脳出血の合併症として①肺炎、②消化管出血、③深部静脈血栓症からの肺塞栓症の3つがあります。
いずれも命に関わる病気なので、重症の脳出血患者さんや、高齢者の患者さんには注意が必要になります。
脳出血の予防
脳出血の予防ですが、原因となる高血圧の管理が中心になります。
目標血圧は140/90mmHg以下とされています。
またMRI検査でマイクロブリーズと呼ばれる微小な脳出血がある人は要注意です。
まとめ
今までに何百人もの脳出血の患者さんを治療してきました。
普通に脳神経外科の外来を受診して脳出血が見つかる患者さんもいれば、意識が全くなくなって救急搬送されてくる患者さんもいます。
重症の脳出血の患者さんには(僕の印象であって、科学的ではないかもしれませんが)共通点があります。
・とにかく不摂生をしている男の人(または女の人)
・高血圧を放ったらかしにしている人
・そもそも健康診断を全く受けていない人
普段から健康に気をつけているのに脳出血を起こす患者さんも中にはいますが、非常に軽い脳出血でほとんど後遺症が残らないことが多いです。
重症の脳出血を起こしてしまうと、半身麻痺で寝たきりになったり、嚥下機能障害があれば食事はチューブからの流動食のみになってしまいます。
「タバコは絶対やめられんし、ワシはどうなってもいいんや!」
「お酒やめるくらいやったら、死んだ方がましや!」
「健康診断なんか受けても仕方ないわ。もうボロボロなのわかっとる!」
とか言わずに、ご自身の健康面にちょっとだけでも目を向ける努力をした方がいいですよね^ ^
まずは日々の血圧測定から始めてみてください。
脳出血をはじめとする脳卒中の予防は、すべて血圧測定から始まるのです。
それではまた!