85歳以上の高齢者の4人に1人が「認知症」ってご存知でしょうか?
高齢化社会が進む日本では、認知症の患者さんが年々増加してきています。
今回は認知症を理解するための基礎知識について、詳しく解説していきます。
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【目次】
認知症とは?
「認知症」は以前「痴呆症」と呼ばれていましたが、差別的なニュアンスがあるということで2004年に厚生労働省が病名を「認知症」に統一しました。
この「認知症」ですが、様々な原因で脳の神経細胞が死滅して、脳の働きが悪くなることによって発症します。
そして、この脳の機能障害のため生活に支障が出ている状態のことを「認知症」と呼んでいます。
「物忘れ外来」をしていると「認知症」ではないか?ということで、たくさんの高齢者の方が受診されます。
しかし、ほとんどの患者さんは「加齢」に伴った”物忘れ”です。
加齢によって脳の生理的な機能の低下が起こりますが、その場合はヒントがあれば思い出すことができる程度の軽い”物忘れ”です。
本人に”物忘れ”の自覚もあるので日常生活に支障はありません。
したがって、加齢による物忘れは特に治療は必要ないのです。
一方、病的な「認知症」では物事すべてを忘れてしまうので、ヒントを与えても思い出すことができなくなります。
本人にも自覚がなく、病状は進行性で日常生活にも支障が出てくるため、認知症の治療が必要になってきます。
代表的な3つの認知症について解説!
認知症といってもさまざまな種類の認知症があります。
まずは代表的な3つの認知症について紹介していきましょう。
アルツハイマー型認知症
「アルツハイマー型認知症」は認知症の中で最も多く、認知症全体の約50%を占めています。
日本社会の高齢化に伴って、アルツハイマー型認知症の患者さんの数も増加してきています。
アルツハイマー型認知症にかかると、脳の神経細胞の中にアミロイドβタンパクという物質が蓄積し、神経細胞がどんどん破壊されていきます。
記憶の機能をつかさどっている「海馬(かいば)」という部分を中心に、脳全体が徐々に萎縮していきます。
アルツハイマー型認知症では認知機能の低下だけでなく、身体機能も徐々に低下してきてしまい、最終的に寝たきりになってしまう患者さんもいます。
脳血管性認知症
「脳血管性認知症」は脳梗塞や脳出血など脳卒中が原因で起こる認知症です。
認知症全体の約20%を占めています。
脳の障害部位によって、手足の麻痺症状や言語障害などの神経症状を伴う場合があります。
感情失禁といって、感情のコントロールが難しくなるのも特徴の一つになります。
認知症状の進行に関しては、脳卒中の再発とともに階段状に悪化する場合が多いです。
脳卒中が原因となる認知症なので、生活習慣を改善することが最大の予防法になります。
レビー小体型認知症
「レビー小体型認知症」は、脳の神経細胞にレビー小体と呼ばれるタンパク質が蓄積し、神経細胞が徐々に破壊されることで認知症状を発症する病気です。
認知症全体の約20%を占めています。
実際にはいない人や物が見える「幻視」や「妄想」を伴うのが特徴的な症状になります。
また手が震えるようになって筋肉がこわばってきたり、動作が緩慢になるといったパーキンソン病のような症状を伴う場合もあります。
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認知症の症状はどんなものがあるの?
認知症の症状ですが、脳の神経細胞の障害によって起こる「中核症状」と、その中核症状のために起こる「周辺症状(BPSD)」の2つに大きく分けることができます。
それぞれの症状について、詳しく解説していきます。
中核症状
中核症状は認知症の主症状になり、次の3つがあります。
・記憶障害
・理解力・判断力の低下
・見当識障害
この中で特に「記憶障害」は、病気の初期から出現する症状です。
”自分の体験”そのものを記憶することができなくなるため、何もかも思い出すことができないという特徴があります。
また病院に入院したり、引越しなどで生活環境が大きく変わってしまうことで「見当識障害」が強く出現する患者さんもいます。
認知症が重症化してくると、自発性や意欲が低下してくるため、自分のまわりの物事に関心が薄くなり、その結果として記憶障害が目立たなくなってくる場合もあります。
周辺症状
周辺症状(BPSD:behavioral and psychological symptoms of dementia)とは、中核症状によって2次的に起こる様々な症状です。
周辺症状は次の6つの代表的な症状があります。
・妄想(物盗られ妄想、嫉妬妄想)
・徘徊行動
・せん妄(幻覚、錯覚)
・介護拒否(食事、入浴、介護サービスの拒否)
・失禁
・不眠
これらの周辺症状は、患者さん個人の元々の性格や生活環境、心理状態などによって、出現してくる症状や重症度が異なります。
特に危険な行為を起こす周辺症状は、緊急で対処しなければならない場合もあります。
周辺症状には、患者さん本人の性格や生活環境に起因する”根本的な理由”があるため、それを理解した上で適切に対応することが、周辺症状の緩和につながることがわかっています。
認知症を見逃さない!早期発見と予防に努めよう!
もし、身近な人が認知症になってしまったらどうすればよいのでしょうか?
できるだけ病院を早めに受診することも大切です。
しかしそれ以上に、認知症を発症した方を”一人の人間”として認めてあげた上で、自分でできることはなるべくご本人にして頂くように努力することが大切になります。
認知症の方は同じことを何度も繰り返し聞いてくることがあります。
そんな場合でも決して怒らないように心がける必要があります。
大事な予定はカレンダーで確認できるようにしたり、買い物をする時などはメモを活用するなど工夫をする必要があります。
薬の管理も飲み間違いがないように、周囲の人が環境整備をしてあげることが重要です。
認知症の方を否定したり、無理強いしたりするようなことをしないように気をつけてあげましょう。
認知症になった人も、病気になるまでは社会の一員として活躍し、大切な家族を支えてきた人たちなのです。
認知症の症状ばかりに注目するのではなく、その人の”変わらぬ本質”というものをきちんと見つめ、生活に必要なサポートだけでなく医療・介護・福祉サービスを提供してあげることが大切です。
認知症の方を介護する人も、もし自分が認知症になった時は、自分自身がしてもらいたいと思えるような介護をしていく心がけが必要なのです ^ ^
それではまた!