物忘れ外来をしていると、認知症患者さんのご家族から色々な相談を受けます。
ご飯を食べたはずなのに「ワシは食べていない」と言い出したり、「誰かにお金を盗まれた」と言って怒り出したり・・・などなど。
今回は認知症患者さんと一緒に暮らす方のために、よくある4つの場面での実践的な対処法について紹介していきます。
物忘れ外来でも紹介している方法なので、ぜひ試してみてください ^ ^
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【目次】
<Q1> 食事をしたばかりなのに、また食事をしようとする時は?
アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症の患者さんは、ご飯を食べたこと自体の記憶が無くなってしまいます。
また食事の時間がいつなのかもわからなくなってしまいます。
食事をしたばかりなのに「ご飯はまだなの?」と言ってくる認知症患者さんにはどのように接してあげるのがよいでしょうか?
❌ 間違った対応
▶︎「さっき食べたばかりでしょ!」
▶︎「もうお腹が空いたの?まだご飯の時間じゃないですよ!」
認知症患者さんは、否定されることでとても傷ついてしまいます。
(認知症じゃなくても否定されると傷つきますが・・・)
そのことがきっかけで、今までなかったような周辺症状(BPSD)が出現してしまう場合もあるので、このような対応の仕方は望ましくありません。
⭕️ 正しい対応
▶︎「ご飯の準備に時間がかかるので、○△の話でもしてくれますか?」
▶︎「もう少しで3時のおやつの時間なので、それからにしましょうか?」
▶︎「今から作るので、一緒に手伝ってくれませんか?」
決して否定することなく、まずは認知症患者さんの気持ちに共感してあげましょう。
その上で、話題を「食事」からそらすなどして、他のことに関心を向けさせるのがポイントになります。
<Q2> トイレに行けずに、オシッコを漏らしてしまう時は?
認知症の方はトイレに行けずに失禁してしまうことがあります。
この場合、以下に挙げる5つの原因が考えれらます。
✅ トイレの場所がわからなくなった。
✅ トイレの使い方がわからなくなった。
✅ 服の脱ぎ方がわからなくなった。
✅ 尿意・便意がわからなくなった。
✅ 泌尿器科の病気が隠れている。
このことを踏まえた上で、失禁した時の正しい対応を考えてみましょう。
❌ 間違った対応
▶︎「またこんなところでしちゃって!汚い!」
認知症の方でもトイレの失敗によって自尊心が傷ついています。
片付けをしなければならない介護者の気持ちもわかりますが、このように追い打ちをかけるような言い方は望ましくありません。
⭕️ 正しい対応
▶︎ 排泄のリズムを作ってあげる
食事の前後など、毎日決まった時間にトイレに誘導してあげたり、ソワソワするなどの様子を察知して早めにトイレに誘導してあげましょう。
▶︎ 主治医の先生に相談してみる
前立腺肥大や過活動性膀胱など泌尿器科の病気が隠れている可能性もあります。
失禁が続くような場合は、主治医の先生に一度相談してみましょう。
<Q3> 財布を盗まれた!と言って、怒り出した時は?
家族に財布を盗まれた!と言って、怒り出す認知症患者さんもいます。
「自分はここに置いたはずだ」と覚え違いをしているのが原因で、あったはずのものが見当たらないので誰かが盗んだと思い込んでしまうのです。
物忘れ外来でも、無くなった財布のことで言い合いになるご家族もいますが、正しい対応の仕方はどのようにすればよいのでしょうか?
❌ 間違った対応
▶︎「僕が盗むわけないじゃないか!」
▶︎「どこかに置き忘れたんでしょ?どこに忘れたの?」
否定されればされるほど患者さんは疑いを強めることになるので、全くの逆効果になります。
介護者の気持ちもわかりますが、感情的に対応してしまうと折り合いがつかなくなります。
⭕️ 正しい対応
▶︎「財布を一緒にさがしましょうね♪」
▶︎「大切な財布なので、いつも○△に置いていますよ♪」
売り言葉に買い言葉では、状況は悪化するばかりです。
認知症の方の言い分に逆らわず、一緒になって財布を探してあげるなどの対応が望ましいです。
一緒に探している時に、たとえ介護者が先に財布を見つけた場合でも、本人に見つけてもらうように誘導してあげるのがコツです。
<Q4>「家に帰る!」と言い出して、外に出ようとする時は?
自分の家にいるにも関わらず「家に帰る!」と言い出して、外に出て行こうとする認知症患者さんもいます。
自宅や家族のことを認識することができなくなり、このような行動を起こしてしまうのです。
❌ 間違った対応
▶︎「何を言ってるの?ここは自分の家でしょ!」
ご本人は自分の家と認識することができないので、無理に説得しようとするとますます不安になってしまいます。
⭕️ 正しい対応
▶︎「ご飯を用意するので、よかったら食べていってください♪」
▶︎「今日はもう遅いので、うちの泊まっていってください♪」
▶︎「それでは一緒に出かけましょう♪」
否定したり無理に説明したりせず、ご本人が何を心配しているのか?などの訴えにも耳を傾けるようにしましょう。
他にも「一緒に出かけませんか?」といったような気分転換のための声かけも有効な場合があります。
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まとめ
以上、よくある4つの場面での実践的な対応の仕方について紹介してきました。
先日も物忘れ外来で「財布の中のお金を息子に盗まれた!」と怒り出した認知症のおばあちゃんがいました。
息子さんは息子さんで「オカンのお金なんか盗んでどないすんねん!!」と逆ギレ。言い合いになってしまい、収集がつかなくなりました。
これって全然他人の家の話ではありません。
高齢化社会が進むに伴い、認知症患者さんの数もどんどん増えてきています。
認知症を発症した親の介護をするのなんて、当たり前の時代がやって来ています。
物忘れ外来でもお勧めしているのですが、間違っていることをわからせようとしたり責めたりするのではなく、認知症の方とどのように関わっていけば一緒に上手く生活していけるのか?という点に注目して工夫してみると良いでしょう。
介護者の方は大変だとは思いますが、もしかしたら”新しい発見”や”介護の楽しみ”を見いだせるかもしれませんよ〜 ^ ^
それではまた!