脳出血

視床出血の症状と治療法について解説!

視床出血、脳出血

 

脳出血は、生活習慣病の一つである高血圧が原因となって脳の中に出血を起こす病気ですが、出血する部位によって様々な名前で呼ばれています。

今回は脳出血の中でも比較的頻度の高い「視床出血(ししょうしゅっけつ)」について、診断や治療法など詳しく解説していきます。

 

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【目次】

視床出血とは?

まず「視床(ししょう)」がどこにあるのかを説明します。

下の図を見てみましょう。

 

被殻、内包、視床

 

脳のMRI画像ですが「視床」は「被殻(ひかく)」と「内包後脚(ないほうこうきゃく)」の内側に存在しています。

この視床という場所は、体の感覚を脳に伝える中継点の役割を担っています。

視床出血は脳出血の中では被殻出血に次いで2番目に多く、脳出血全体の約30%にもなります。

 

視床出血で起こる5つの症状

視床出血を起こした時にはどのような症状が出現するのでしょうか?

同じ視床出血でも、出血の量によって症状の重症度は異なります。

 

非常に小さな視床出血であれば、出血したことにさえ気がつかない人もいます。

反対に、出血が非常に大きい場合は意識が悪くなり、目が覚めなくなる人もいます。

 

視床は内包後脚をはさんで、ちょうど被殻と対称的な位置にあるので、基本的には被殻出血と同じような症状が出現します。

被殻出血についての詳しい話は、以下の記事を参考にして頂ければ幸いです。

 

※「被殻出血」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

それでは視床出血を起こした時の5つの症状について解説していきます。

 

頭痛・吐き気

他の場所の脳出血と同様、視床出血も出血をした時に脳の圧力が高くなって、頭痛を起こします。

また視床は、延髄にある嘔吐中枢に近いため、出血と同時に強い吐き気が起こります。

視床出血も二次生頭痛の原因となります。

 

後頭神経痛、頭痛

 

※「頭痛の種類」の詳しい話はこちらの記事へ→

 

共同偏視(きょうどうへんし)

共同偏視とは、両方の眼球が一定の方向にそろって向いてしまう状態のことを言います。

前回説明しましたが、被殻出血(ひかくしゅっけつ)の時は出血を起こした被殻の方向に共同偏視が起こります。

 

視床出血の場合は、鼻先をにらむような共同偏視が特徴になります。

例えるなら両側の眼を真ん中によせて、鼻の先に止まった小さな虫を何とか見ようとするような状態です。

 

視床出血

 

メカニズムは少し難しい話になりますが。視床出血の影響で脳の腫れが脳幹(のうかん)の方に伝わり、両側の外転神経などが障害されるために起こります。

専門的になるので、詳しく知っておく必要はないです^ ^

 

手足の麻痺

視床のすぐ外側には運動神経が走行する「内包後脚」というところがあります。

したがって視床出血を起こすと、この内包後脚が内側から障害されて、手足の麻痺症状を起こすことになります。

この時、視床出血を起こした側とは反対側の手足の麻痺症状が起こります。

 

脳の運動神経細胞から伸びる「運動神経」は、視床よりも下にある延髄」と呼ばれるところで左右が入れ替わります。

例えばの脳から伸びる運動神経は、の内包後脚を通った後に延髄で左右が入れ替わり、の手足の方へ伸びていきます。

したがっての視床出血が起こると、の内包後脚が障害されるため、反対側になるの手足の麻痺症状が出現することになるのです。

 

視床症候群

視床症候群」は視床出血に特有の症状になります。

代表的な症状を2つ挙げてみます。

 

視床痛

視床手

 

視床出血を起こした時、出血した方とは反対側の体に感覚障害が起こりますが、それと同時に視床痛」と呼ばれる知覚異常を起こします。

また「視床手」といって、反対側の手指が一本一本それぞれ異なった不随意運動(自分の意思に関係なく、勝手に動きだす)が起こり、3ヶ月くらいして視床手と呼ばれる手の変形を起こすことがあります。

少し厚めの雑誌(少年ジャンプくらい)を、親指とその他4本の指で挟み込むように持つという感じの変形になります。

 

 

意識障害

視床出血の大きさがある程度の大きさになると、意識がなくなる人もいます。

視床出血の影響で、意識を保つために必要な脳幹(のうかん)と呼ばれる部分が圧迫されて意識障害を起こします。

脳幹には呼吸をつかさどる中枢もあるので、視床出血があまりにもひどい場合は呼吸が止まり、人工呼吸器が必要になる患者さんもいます。

 

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視床出血の治療法

それでは視床出血を起こした時はどのような治療が行われるのでしょうか?

視床出血は通常、下の脳CT写真のような感じで小さいものが多いです。

 

CT、視床出血

 

この視床出血の治療は「外科的治療」になるのでしょうか?それとも「内科的治療」になるのでしょうか?

ほとんどの場合は内科的治療になりますが、場合によっては外科的治療が必要になる場合もあります。

視床出血の標準的な治療方針について、それぞれの治療法をもう少し詳しく解説していきます。

 

外科的治療

まずは外科的治療ですが、実は視床出血に関しては、出血を取り除くような外科的手術は一般的には行われておらず、薬を用いた内科的治療が中心となります。

この記事の最初に出した脳MRIの写真でもお分かりいただけると思いますが、視床のある場所が脳の表面から非常に遠いところに位置するため、手術がかなり困難になります。

また視床のすぐ外側には内包後脚があるので、ヘタに手術をしてしまうと残されている運動神経を全て壊してしまうため、手術する前よりも症状が悪化してしまいます。

(もちろん、ジョウズに手術しても悪化します・・・)

 

しかし視床出血でも手術をする場合があります。

脳の中には「脳室」と呼ばれる水の貯まったところがあります。

この脳室の中に、視床から吹き出した出血がつまってしまって、水が流れなくなることがあります。

この状態は「水頭症(すいとうしょう)」と呼ばれており、流れなくなって貯まっていく水によって、脳が中からどんどん圧迫されていきます。

 

この水頭症を放置しておくと脳が破裂!・・・というわけではありません。

頭蓋骨という硬い入れ物の中に入っている脳は逃げ場がないため、中から圧迫されることでいっぱいいっぱいになってしまい、元に戻らないようになるまで脳が壊れてしまいます。

 

したがって視床出血で水頭症になっている患者さんは、緊急で「脳室ドレナージ術」という脳の中の水を抜く手術を行います。

この手術で急場をしのげば、なんとか回復してくる患者さんもいます。

 

内科的治療

次は内科的治療です。

視床出血に限らず、脳出血が「高血圧」が原因となっている場合がほとんどです。

したがって、血圧を下げる薬を持続で注射し、血圧コントロールを行います。

目標とする血圧は上の血圧が140mmHg未満となります。

 

また視床出血のまわりの脳が腫れてきて、正常な脳が壊されてしまわないように、脳の腫れを軽減する薬グリセオール)の点滴なども行います。

 

視床出血は脳の中心に近い部分で起こります。

脳の中心には「意識を保つ」といったような大切な機能や神経が集まっているため、出血が小さくても非常に重症度が高くなります。

 

視床出血はどこまで回復するの?後遺症は?

最後になりますが、視床出血はどこまで回復する見込みがあるのでしょうか?

視床出血後の経過のパターンを以下に示します。

 

全く後遺症が残らず、入院したといっても信じてもらえないくらい回復する

② リハビリをしてかなり回復するが、手足の麻痺などの後遺症が残ってしまう

重度の半身麻痺意識障害のため、ベッド上で寝たきりの生活を余儀なくされる

④ 治療の甲斐なく、亡くなられる・・・

 

視床出血も「最初の出血」が大きければ大きいほど重症度が高くなります。

また視床は脳の中心に近いところにあるので、小さな出血でも脳の大切な機能を壊してしまい、重篤な意識障害呼吸機能障害などによって、人工呼吸器が必要になる場合もあります。

 

救急車で運ばれてくるような重症視床出血の患者さんの共通点は、何かしらの「生活習慣病」をもっている点になります。

高血圧糖尿病喫煙歴などない方が視床出血を起こすことは、まずありません。

視床出血などの脳出血を予防するためには、特に血圧の管理が重要になります。

血圧の高い方は生活習慣の見直しをした上で、できることなら高血圧の治療を受けるようにしましょう。

 

それではまた!

 

高血圧

 

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