くも膜下出血

くも膜下出血のコイル塞栓術!メリットとデメリットについて解説!

くも膜下出血、脳動脈瘤、コイル塞栓術

 

くも膜下出血は、脳の血管にできたコブ(脳動脈瘤)が突然破裂することによって起こる危険な病気です。

この破裂した脳動脈瘤を治療し、なんとしてでも出血を止めなければ患者さんは助かりません。

治療法としては外科的手術の「クリッピング術」と、カテーテルを用いた血管内治療の「コイル塞栓術」があります。

今回は脳動脈瘤を”切らずに治す”ことができる「コイル塞栓術」について、そのメリットとデメリットを中心に解説していきます。

 

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【目次】

コイル塞栓術とは?

まず脳動脈瘤の「コイル塞栓術」とはどんな治療法なのでしょうか?

脳の病気の治療といえば、全身麻酔をかけて頭をガバッと切って開けて、顕微鏡で脳を手術をするというイメージだと思います。

しかしこのコイル塞栓術は、頭を切らずに治療することができる”画期的”な治療法なのです。

コイル塞栓術は、脳の血管にできたコブを、血管の中から「コイル」という細い針金みたいなものをクルクルとつめて治療します。

そのコイルを脳動脈瘤まで運ぶのが「カテーテル」という道具になります。

”百聞は一見にしかず”なので、早速コイル塞栓術の動画を見ていただきましょう!

 

 

いかがでしょうか?

実際はレントゲンで脳の血管を造影剤で写しながら、カテーテルで治療を行います。

このような方法で、破裂した脳動脈瘤を血管の内側から治療するのが「コイル塞栓術」になります。

 

「クリッピング術」と「コイル塞栓術」どちらがいいの?

脳動脈瘤の主な治療法には「クリッピング術」と「コイル塞栓術」の2つがあります。

40年以上昔から、脳動脈瘤の標準治療は”切って治す”クリッピング術でした。

しかしカテーテルという道具が開発されたのをきっかけに、1990年代からは”切らずに治す”コイル塞栓術が開発されたのです。

 

治療を受ける患者さんの立場で考えるなら、”切らずに治す”コイル塞栓術の方が絶対にいいはずです。(やっぱり痛くなさそうなので)

しかし、このコイル塞栓術にもメリットだけでなく、デメリットもあります。

脳動脈瘤のクリッピング術と比較した時の、メリット・デメリットを挙げてみましょう。

 

コイル塞栓術のメリット

・頭を切らなくてもよい

手術が難しい脳動脈瘤でも治療可能

高齢者でも治療可能

・治療に伴う認知機能の低下が少ない

・1回の治療で、複数の脳動脈瘤を治療できる

 

コイル塞栓術のデメリット

・脳動脈瘤の頚部が広いものは治療成績が悪い

大きな脳動脈瘤は不完全にしか治療できない

再治療になる可能性が高い

 

このメリット・デメリット以外にも、主治医の脳神経外科の先生が、どちらの治療が得意かということも重要になります。

手術が得意な先生は、絶対に手術(クリッピング術)を強く勧めてきます。

一方で、カテーテル治療が得意な先生は、最初からカテーテル治療しか考えていない先生も中にはいます。

ちなみにカテーテルによるコイル塞栓術は、カテーテル治療専門医の資格を持った先生しかできないので、病院によってはクリッピング術しかしていないところもあります

 

一番よいのは、くも膜下出血を「クリッピング術」と「コイル塞栓術」のどちらでも治療できる病院を選ぶことです。

そんなのわからないよ〜!と言われるかもしれませんが、いざという時のために近隣の脳神経外科のある病院のホームページをチェックしておいてもよさそうですね ^ ^

 

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コイル塞栓術で悪くなった患者さんの話・・・。

脳動脈瘤のコイル塞栓術は”切らずに治す”治療法なので、患者さんにとっては非常に負担が少なくてすみます。

カテーテル治療で使う道具も進歩し、治療を行う術者の技術も向上しているため、このコイル塞栓術の手術件数はどんどん増えてきています

しかし、クリッピング術なら1回の治療で完治するタイプの脳動脈瘤を、「患者さんの体の負担を少なくするため」という理由でコイル塞栓術を行ってしまい、脳動脈瘤が大きくなって取り返しのつかなくなる患者さんもいます

それでは具体的な患者さんを例にあげてみましょう。

 

40歳代の男性で、くも膜下出血を起こしてクリッピング術を受けています。

前交通動脈未破裂脳動脈瘤もあることがわかり、くも膜下出血の治療が落ち着いた段階で、その未破裂脳動脈瘤の治療をすることになりました。

脳動脈瘤の頚部がやや広く(※「コイル塞栓術のデメリット」参照)、患者さんも若い男性なので、通常であればクリッピング術での治療を選択してもよさそうです。

しかしこの患者さんの頚部の広い前交通動脈瘤は、コイル塞栓術が行われたのです。

 

コイル塞栓術、脳動脈瘤、くも膜下出血

 

案の定、脳動脈瘤につめられたコイルは不十分だったようです。

脳動脈瘤の頚部が広かったためコイルが逸脱するリスクもあり、しっかりとコイルをつめることができないのです。

しかも最悪なことに、脳動脈瘤は徐々に大きくなってきていました

 

担当の先生に「追加のコイルをつめたら大丈夫です。もう一回カテーテルで治療しましょう!」と言われたようです。

しかしその言葉に強い不信感を感じてしまい、以前アキラッチョが努めていた病院に逃げて来られました。

コイル塞栓術を行う先生によくありがちなのですが、コイル塞栓で治療をした脳動脈瘤が悪くなった時にも、とことんコイル塞栓術の追加治療を繰り返してしまいます

その結果、コイルがグチャグチャにつまった化け物みたいな巨大脳動脈瘤に成長し、手がつけられなくなってしまうのです。

 

この患者さんも結局手術になりました。

 

※「この手術をしたゴッドハンド先生」のすごい手術の話はこちらの記事へ→

 

脳動脈瘤、コイル

 

顕微鏡で脳動脈瘤を観察しているところです。

恐ろしいことに、めちゃくちゃ薄くなった脳動脈瘤の壁の向こうにコイルが透けて見えています。

 

脳動脈瘤、コイル

 

出血しないように血管をクリップで一時遮断し、コイルが不完全につまった脳動脈瘤をハサミで切り取ったところです。

脳動脈瘤の中に残っている針金のようなコイルが見えています。

 

脳動脈瘤、コイル

 

コイルを動脈瘤ごと全て取り除き、脳動脈瘤にクリップをかけて手術終了となりました。

最初からクリッピング術を行っておけば、一発で完治できていたはずです。

コイル塞栓術にかかった費用も、正直言って馬鹿にならない金額です(汗)

 

もちろん、コイル塞栓術を進めた先生に悪気はないはずですが、ものごとを多面的に見ることが重要です

脳神経外科医って、すごく狭いところで小さな病変を扱う仕事なので、考え方が真っ直ぐになりすぎて、周りが見えなくなってしまうのかもしれませんね ^ ^

(他人事みたいに言ってますが、僕も気をつけます!)

 

まとめ

脳動脈瘤のカテーテル治療「コイル塞栓術」について解説してきました。

一番のメリットとしては「切らずに治療することができる」ため、患者さんの体への負担が少なくてすむことになります。

しかし、脳動脈瘤の頚部が広いものや、サイズの大きいものに関しては、手術(クリッピング術)の方が確実に治すことができます

 

侵襲が少ないというだけで治療法の選択を間違ってしまうと、後から手痛いしっぺ返しを食らうことになります。

これはどんな病気の治療にも言えることかもしれませんね ^ ^

 

それではまた!

 

脳出血、脳梗塞、バイパス手術

 

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