くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤ですが、脳の検査をするとたまたま発見されることがあります。
この未破裂脳動脈瘤ですが、日本人全体の2〜6%の方がもっているとも言われています。
今回は未破裂脳動脈瘤がたまたま見つかった時に、治療をすべきかどうかについてのお話です。
(決して人ごとではありませんよ〜!)
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【目次】
未破裂脳動脈瘤が見つかったらどうする?
脳神経外科を受診する患者さんは、脳の異常を調べるためにMRI・MRA検査を行う方が多いです。
このMRI・MRA検査によって、偶発的に未破裂脳動脈瘤が発見されることがあります。
未破裂脳動脈瘤はよっぽど大きいサイズでない限り、基本的には何も悪さをしません。
しかし何かの拍子に破裂してくも膜下出血を起こしてしまうと、命の危険が出てきます。
この偶然発見された未破裂脳動脈瘤の治療を考える際には、以下に挙げるものが重要になります。
・患者さんの年齢
・健康状態
・脳動脈瘤のサイズ
・脳動脈瘤の部位
・脳動脈瘤のカタチ
一般的に高齢者の手術は、全身性の合併症を起こすリスク高くなるので、できれば避けたいものです。
しかし、脳動脈瘤のサイズが大きかったり、カタチが悪くてコブ自体に小さなコブができているような脳動脈瘤であれば、放っておくのは危険です。
患者さんの健康状態が悪くなければ、高齢者であっても手術を行うことはよくあります。
また高齢者は脳の萎縮が進んでいるので、正直言って手術は非常にしやすいです。
脳動脈瘤の部位によっては手術時間もかなり短縮することもできます。
糖尿病があってタバコを吸っているような健康状態の悪い中年の患者さんよりも、健康状態の良い高齢の患者さんの方が、よっぽど安全に手術を行うことができます ^ ^
未破裂脳動脈瘤の治療に関しては以上の点から総合的に検討し、治療に踏み切るかどうかを判断します。
破裂しやすい脳動脈瘤はこれだ!
未破裂脳動脈瘤の中でも、破裂しやすいものは統計学的にわかっています。
頭の検査をして偶然見つかってしまった脳動脈瘤が、破裂しやすいものとわかれば前向きに治療を検討する必要があります。
それでは破裂しやすい脳動脈瘤を挙げてみましょう。
・大きさが5mm以上の脳動脈瘤
・大きさが5mm未満の脳動脈瘤でも・・・
① 症状のある脳動脈瘤
② 前交通動脈瘤(A-com A 動脈瘤)
③ 内頚動脈-後交通動脈瘤(IC-PC 動脈瘤)
④ 不整形・脳動脈瘤自体にコブができている
まずは何と言っても脳動脈瘤の大きさです。
脳動脈瘤のサイズが大きければ大きいほど破裂しやすくなります。
脳動脈瘤のサイズの違いによる一年間の破裂率を挙げてみましょう。
・3〜4mm → 0.36%
・5〜6mm → 0.50%
・7〜9mm → 1.69%
・10〜24mm → 4.37%
・25mm以上 → 33.40%!!!
なんと脳動脈瘤の大きさが2.5cm以上のものは、一年間で33.4%の確率で破れるということになります。
この大きさの脳動脈瘤を持つ人が3人いたとしたら、その中の1人が破裂してくも膜下出血を起こす計算になります。
サイズが5mm未満のものであっても「前交通動脈瘤」や「内頚動脈-後交通動脈瘤」は破裂しやすいことがわかっています。
「ブレブ」とよばれる脳動脈瘤自体にコブができているようなものがあれば、ブレブの無い脳動脈瘤よりも64%も破裂する危険性が高くなります。
また内頚動脈-後交通動脈瘤は、サイズが大きくなってくると「動眼神経」とよばれる脳神経を圧迫することがあります。
これによって、ものが二重に見えたり(複視)、まぶたがふさがってくる(眼瞼下垂)ような症状が出現することがあります。
このような症状が出てくるような脳動脈瘤も破裂しやすいことがわかっています。
もし未破裂脳動脈瘤が偶然見つかった場合には、ここで挙げてきたような「破裂しやすい脳動脈瘤」であれば、治療を前向きに考えた方がよいかもしれません。
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未破裂脳動脈瘤を経過観察するときの注意点
未破裂脳動脈瘤の中でも小型のものであれば、破裂する確率は非常に低くなります。
先ほども紹介しましたが、3〜4mmの小型の脳動脈瘤であれば一年間の破裂率はたったの0.36%です。
通常であれば定期的な画像検査のみで経過観察となりますが、やはり日常生活の中でも注意すべき点はあります。
・タバコを吸わない
・大量の飲酒を避ける
・高血圧があれば治療をする
この「喫煙」「大量の飲酒」「高血圧」は、脳動脈瘤が破裂しやすくなる因子であることがわかっています。
半年から1年毎の画像検査で脳動脈瘤のサイズや形状をチェックするのと同時に、生活習慣をきちんと是正することが、脳動脈瘤の破裂を予防するためには重要になってくるのです。
まとめ
脳の検査で偶然見つかってしまう未破裂脳動脈瘤ですが、サイズの大きなものや形の不整があるものは破裂しやすいです。
また「前交通動脈瘤」や「内頚動脈-後交通動脈瘤」といったように、部位によっても破裂しやすい脳動脈瘤があります。
治療をするかどうかは非常に難しい問題になりますが、破裂しやすいものに限って言えば、積極的に治療を考えた方がよいでしょう。
もし脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こしてしまった場合、45.8%の人は手足の麻痺など重篤な身体障害が残り、23.4%の人が最終的に亡くなってしまいます。
脳動脈瘤があるとわかっていたのに、破裂してつらい思いをするのであれば、やはり悲劇が起こる前に未然に防ぎたいものです。
脳神経外科の先生によって、治療を強く勧める先生もいれば、こんなの絶対に破裂しないよ!って必ず経過観察にしてしまう先生もいます。
実際に経過観察でよいと言われていた未破裂脳動脈瘤の患者さんが、くも膜下出血になって救急搬送されて来ることもあります。
未破裂脳動脈瘤の治療方針は、急いで結論を出す必要はありません。
納得がいかなければ、他の先生の意見を聞くことも必要です。
自分の大切な脳のことなので ^ ^
それではまた!