脳出血の血圧管理!今と昔はこんなに違うって知ってますか?

高血圧、脳出血

 

脳出血の一番の原因は高血圧です。

脳の血管に高い血圧がかかり続けると、弱い部分が破綻し脳の中に出血を起こします。

脳出血を起こした時はさらに血圧が高くなりますが、この血圧をどこまで下げるかという話は時代とともにかなり変遷しています。

今回は脳出血を起こした時の血圧管理が、今と昔ではどれだけ違うのかというお話です。

実際の救急の現場を再現しながら進めていきましょう。

 

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昔の脳出血・血圧管理はこうだった【ガイドライン2009より】

脳出血をはじめとする脳卒中の診療は「脳卒中治療ガイドライン」という基準に基づいて行われています。

今までにこのガイドラインは(本として)2回出版されています。

最初に出たのが2009年で、内容が見直されて改定されたものが2015年になります。

したがって、2014年までは以前の基準で脳卒中の治療が行われていました。

 

脳出血の血圧管理で今まで何やったん?というくらいの激変が起こりました。

救急車で運ばれて来た脳出血患者さんの血圧を、どれくらい下げなければならないか?という血圧の目標値です。

 

突然ですが、2014年、ある日の救急外来での話をします。

いつものように救急車で半身麻痺になった患者さんが運ばれて来ました。

頭のCT検査をすると脳出血でした。

救急室に戻ると看護婦さんがすぐに血圧などを測定してくれます。

 

看護婦さん:「先生、血圧が220です」

 

アキラッチョ:「220か…そしたらニカルジピン(血圧を下げる薬)始めて下さい」

 

看護婦さん:「どれくらいまで下げますか?」

 

アキラッチョ:「180くらいでお願いします」

 

看護婦さん:「えっ!?そんなに高くていいんですか?」

 

アキラッチョ:「大丈夫。だってガイドラインに書いてあるんだもん!

 

という感じでした。

血圧の数値は収縮期血圧(上の血圧)のことで単位(mmHg)を省略しています。

 

脳出血を起こしたばかりの患者さんは血圧が200とかは当たり前で、僕が見た最高の血圧は300という患者さんもいました。

(ここまで測れるんだ!って研修医の時に驚いた記憶があります)

そして「脳卒中治療ガイドライン2009」では次のように書いています。

 

脳出血急性期の血圧は、収縮期血圧が180mmHg未満または平均血圧が130mmHg未満を維持することを目標に管理する(グレードC1)

引用:「脳卒中治療ガイドライン2009」より

 

普通に考えたらすごく高い血圧ですが、これでよかったのです。

これには理由がありました。

脳出血を起こした脳はものすごく腫れあがっています。

その腫れあがった脳が、頭蓋骨という硬い入れ物の中で「キツイ!キツイよー!」って悲鳴をあげている状態です。

 

この腫れあがった脳の中に血液を送りこむためには、ある程度の高い血圧が必要になります。

血圧を下げすぎてしまうと、脳に血液を送り込むことができなくなってしまって脳が死んでしまいます。

例えば通勤ラッシュ時の超満員電車に、あと5人のサラリーマンを乗せるためには、駅員さんが強い力で電車の中に押し込まなければなりません。

それと同じです。

 

・脳出血で腫れた脳に血液を送り込むためには180くらいの血圧が必要である

・血圧を180より下げてしまうと、血液が流れなくなって脳が死んでしまう

 

この2つの考えから、脳出血の目標血圧が180mmHgだったのです。

 

血圧

 

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最新!脳出血の血圧管理について【ガイドライン2015より】

2015年、ラグビーW杯で日本代表が歴史的な大活躍をしました。

日本ラグビーは世界を驚かし、その存在を世に知らしめたのを今でも覚えています。

 

そして今でも覚えているもう一つのビッグニュースが、脳出血の血圧管理における目標値の変化でした。

世界を驚かせたり、その存在を世に知らしめた訳ではありませんが、僕たち脳卒中診療を行っている者にとっては驚きでした。

新しいガイドラインは唐突に次のように語っていました。

 

脳出血急性期の血圧は、できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い(グレードC1)

引用:「脳卒中治療ガイドライン2015」より

 

目標血圧が180から一気に140にダウンしてました。

えっ!?そうなの?

もしかして今までのガイドラインを覚え間違えてたかな?ってことで、古いガイドラインを開いて確認もしました。

まあでも・・・エライ先生たちが導き出した結果なら、140で間違いないんだろうなあと勝手に納得しました。

色々な臨床研究の中で、目標血圧を180から140mmHgへ下げてみたら次のことがわかったようです。

 

・死亡する患者さんや、重い後遺症が残る患者さんの数は変わらなかった。

・いろんな有害なことが増えなかった。

身体機能の回復に関しては改善を認めた。

 

ということで、それ以降の脳出血に対する救急は(ちょっと)変わりました。

 

突然ですが、2015年、ある日の救急外来での話をします。

いつものように救急車で半身麻痺になった患者さんが運ばれて来ました。

頭のCT検査をすると脳出血でした。

救急室に戻ると看護婦さんがすぐに血圧などを測定してくれます。

 

看護婦さん:「先生、血圧が220です」

 

アキラッチョ:「220か…そしたらニカルジピン(血圧を下げる薬)始めて下さい」

 

看護婦さん:「どれくらいまで下げますか?」

 

アキラッチョ:「140くらいでお願いします」

 

看護婦さん:「えっ!?昨日まで180って言ってたのに、なんで今日は140なんですか?」

 

アキラッチョ:「大丈夫。だってガイドラインに書いてあるんだもん!

 

看護婦さん:「・・・・(先生、忙しすぎて頭おかしくなったのかな)・・・」

 

もう一人の看護婦さん:(小声で)「あの先生、言うことコロコロ変わるから大変やわ・・・」

 

いいんです!(泣)

患者さんが少しでもよくなってくれれば、僕はどう思われても構いません。

もう2017年になります。

そろそろ誤解が解けていることを期待しています。

 

ガイドライン

 

まとめ

脳出血の血圧管理に対するガイドラインの話をしてきました。

一夜のうちに目標血圧が180から140と、一気に変わることには驚きですね。

 

世の中には、様々な病気に対する治療ガイドラインがたくさん存在します。

ガイドラインに沿って治療することが標準治療となり、患者さんの病状が一番よくなるようになっています。

 

しかし同じ病気でも、患者さんによっては病状が全く異なる場合があります。

中にはガイドライン通りに治療をしていたら、逆に悪くなってしまうような患者さんもいます。

特に脳の病気は、刻一刻と病状が変化していくことが多いです。

どうしても助けなければならない時は、医師としての直感を信じてガイドラインに背いた治療を選択することもあります。

 

チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世が次のように言ってます。

 

ルールを破るために、ルールを学びなさい

 

ルールは破られるものです。だから、それをどう適切に壊すべきかを知るためにも、ルールを学ぶ必要があるということです。

さすがダライ・ラマですね!

 

それではまた!

 

医師、頭痛

 

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