脳梗塞の救命手術!外減圧術と内減圧術のすべて

脳梗塞、外減圧術

 

脳の血管が突然つまってしまう脳梗塞ですが、中でも「内頚動脈」や「中大脳動脈」といった太い血管がつまった場合は治療に難渋します。

発症から4.5時間以内であればt-PAによる血栓溶解療法を行うことができますが、太い血管につまる血栓は大型のものが多くて簡単には溶解しないため、カテーテルによる血栓回収治療を追加する場合が多いです。

これらの治療が間に合えば良いのですが、中には時間が経ちすぎていて大きな脳梗塞がすでに完成してしまっている患者さんもいます。

今回は内頸動脈や中大脳動脈がつまって、すでに大きな脳梗塞が完成してしまった患者さんの命を救う手術「外減圧術」と「内減圧術」について詳しく解説していきます。

 

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外減圧術ってどんな患者さんに適応があるの?

外減圧術がどんな手術なのか?を解説する前に、まずはどんな脳梗塞患者さんにこの手術を行うのかについて説明していきます。

外減圧術について、脳卒中治療ガイドライン2015には次のように記載されています。

 

中大脳動脈灌流域を含む一側大脳半球梗塞において、(一部略)発症48時間以内に硬膜形成を伴う外減圧術が強く勧められる(グレードA)。

引用:「脳卒中治療ガイドライン2015」より

 

これを簡単に説明すると「中大脳動脈がつまってしまう大きな脳梗塞は、早めに外減圧術を行なった方が良いですよ」ということになります。

中大脳動脈やその大元の血管である内頚動脈がつまった患者さんの中には、t-PAによる血栓溶解療法やカテーテルによる血栓回収治療がうまくいかない場合もあります。

また救急搬送されてきた時点で、大きな脳梗塞がすでに完成してしまっている患者さんもいます。

 

わかりやすいように実際の脳梗塞患者さんの写真を見ていきましょう。

次の写真は86歳の女性が、左半身麻痺を起こして救急搬送されてきた時のCT検査です。

 

脳梗塞、CT

 

CTでは一見何も異常がないように見えますが、この女性患者さんは呼びかけても(痛み刺激を与えても)ほとんど反応がなく、左手足は完全に動かなくなっているのです。

この直後にMRI検査を続けて行いました。

 

脳梗塞、MRI

 

結果は予想通り、右の大脳(写真向かって左側が右脳です)が真っ白に変化しています。

この写真から右大脳に大きな脳梗塞を起こしていることがわかります。

 

しかもここまで真っ白になっているということは脳梗塞としては完成してしまっていることを意味するので、つまった血栓を急いで回収して脳血流を再開させても、脳は元には戻らないのです。

ちなみに脳血管を調べるMRA(MRIと同時にできる検査です)では、向かって左側にあるはずの「右内頚動脈」が全く写っていませんでした。

 

脳梗塞

 

以上から、右内頚動脈閉塞による右脳梗塞と診断されました。

このまま脳梗塞だけで終われば良いのですが、大きな脳梗塞はこの後が恐いのです。

脳梗塞を起こした部分は、時間の経過とともにどんどん腫れてくるのです。

脳は頭蓋骨という硬い入れ物の中に入っているので、脳梗塞を起こした部分が腫れてくると、正常な部分がどんどん押されてきて脳全体が歪んできます。

このおばあちゃんも3日後には次のCT写真のようになってしまいました。

 

脳梗塞

 

この患者さんですが、86歳と超高齢であったのに加え、手足の筋力低下でほぼ寝たきりの状態で生活されていた方なので、救命目的の外減圧術を家族の方が希望されませんでした。

脳がここまで腫れてしまうと脳幹(のうかん)という生命活動を維持するための重要な脳が圧迫を受けて、最終的に呼吸不全となって亡くなられました。

 

脳卒中治療ガイドライン2015には次のようにも記載されています。

 

下記の適応を満たせば、外減圧術が強く進められる(グレードA)。

・年齢が18〜60歳までの症例

・症状発現後48時間以内の症例

引用:「脳卒中治療ガイドライン2015」より

 

脳梗塞の外減圧術は、若い脳梗塞患者さんを救命するためにできるだけ早期に行わなければならない手術ということになります。

それでは61歳以上の脳梗塞患者さんは救命できないのか?ということになりますが、そんなことはありません。

80歳を越えた方でも、脳梗塞を発症する前は元気で生活されていたという患者さんであれば、救命するための外減圧術を行うことはあります。

これはあくまでも一つの目安で、例えば61歳以上の人は外減圧術を受けることができないという訳ではないのでご安心ください ^ ^

 

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外減圧術ってどんな手術?

それでは外減圧術の具体的な方法について紹介していきます。

「血」とか「手術の写真」とかが苦手な方は、一応閲覧注意!です^ ^

 

脳が腫れるような大きな脳梗塞の患者さんは、意識がほとんどない方が多いです。

全身麻酔の手術になりますが、脳梗塞を起こしている方の頭の皮膚を、耳の前からおでこのところまで大きくメスで切開します。

クエスチョンマーク型に切った頭の皮膚を剥がすと、その下には真っ白な頭蓋骨がむき出しになります。

 

頭蓋骨にドリルで何ヶ所か穴を開けて、その穴をつなげるようにドリルカッターで切ってしまいます。

そしてカニの甲羅をガバッと開けるように頭蓋骨を外すと、その下には腫れた脳に圧迫されてパンパンになった硬膜と呼ばれる白い膜が現れます。

最近太ったアキラッチョのジーンズが、太ももに圧迫されてピッチピチになっているイメージです(涙)

 

その張り裂けそうな硬膜を切って開いてあげると、中から腫れあがった脳がブワーッとはみ出してくるのです。

ちょっとわかりにくいですが、腫れあがってきた脳の術中写真を出します。

 

脳梗塞、外減圧術

 

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、写真の真ん中に脳が写っています。

脳の表面に血管が走っているのがわかるでしょうか?

普段の脳の色はクリーム色をしていて本当にキレイなのですが、脳梗塞を起こして血液が行き届いていないので、くすんだ元気のない色をしているのです。

この後、切り開いた硬膜に「人工硬膜」をぶかぶかになるように縫い付けて、腫れてきた脳が少しでも外に向かって圧力を逃がすことができるようにします。

 

 

脳梗塞、外減圧術

 

通常の脳外科手術では頭蓋骨を元に戻してプレートで固定するのですが、脳梗塞の外減圧術の時は脳の腫れが治るまで頭蓋骨を外したままにします。

術後にジワジワ出てくる血液を排出するためのドレーンチューブを置いて、このまま頭皮を閉じると手術終了です。

 

この外減圧術を行うことで、脳幹という大切な部分に向かっていた圧力が、頭蓋骨がなくなって楽になった外側に向かって逃げてくれるので、ひとまず救命することができるのです。

脳梗塞による脳の腫れがおさまるのには約2週間以上かかります。

術後の頭の検査で脳の腫れが落ち着いたことを確認できれば、頭蓋骨を元に戻す手術を行うのです。

 

内減圧術ってどんな手術?

「外減圧術」に加えて、脳梗塞の救命手術には「内減圧術」という手術もあります。

あまりにも脳が腫れていて、外減圧術だけでは救命できないと判断した場合は、脳を一部切除してしまいます。

 

切除してしまう脳は主に「側頭葉」というこめかみの奥にある脳なのですが、それをごっそりと取り除いてしまうことで、その奥にある脳幹への圧迫を解除してあげるのです。

そんなことして大丈夫なのかな?って心配になりますが、脳梗塞を起こして死んでしまっている脳なので全然影響はありません

 

内減圧術を行なう場合はすごく脳が腫れている時なので、頭蓋骨を外したままにする外減圧術も加える場合が多いです。

しかし「内減圧術」+「外減圧術」でとことん減圧したのに、術後もまだまだ脳が腫れてくる場合もあります。

脳の腫れを改善する点滴(グリセオール)で何とか急場を乗り切れることが多いのですが、ひどい場合は人工呼吸器による呼吸管理が必要な患者さんもいるので、脳梗塞ってホント恐い病気です・・・。

 

まとめ

内頸動脈や中大脳動脈といった太い脳の血管がつまって起こる”大きな脳梗塞”ですが、発症から4.5時間以内であればまずはt-PAによる血栓溶解療法を行います。

しかしこれらの太い血管につまる血栓は比較的大きな血栓になるので、血栓溶解療法で助かる人は少ないです。

 

すぐにカテーテル手術の血栓回収治療を行うのですが、その間に脳梗塞が完成してしまう患者さんもいます。

大きな脳梗塞はどんどん腫れてきて命にか関わるような状態になるのですが、今回紹介した「外減圧術」や「内減圧術」で救命することが可能です。

あくまでも救命が目的になるので、手術が成功したからといって動かなかった手足が動くようになったりするということは残念ながらありません。

患者さんによっては意識が戻らず、そのまま寝たきりになってしまう人もいます。

 

脳梗塞は一度完成してしまうと脳機能の回復の見込みはありません。

日々の生活習慣に気をつけて、脳梗塞の予防に努めることは最も大切なのですが、脳梗塞の初期症状を見逃さないことも重要です。

 

「Time is brain!」

 

病院に到着するまでの時間が早ければ早いほど、助かるための治療の選択肢が増えます。

おかしいな?っていう症状があれば「我慢は禁物」すぐに病院を受診しましょう。

 

それではまた!

 

救急車、脳梗塞