頚動脈狭窄を切らずに治す!頚動脈ステント留置術(CAS)のすべて

脳梗塞、頚動脈狭窄、CAS、ステント留置

 

脳梗塞の原因となる「頚動脈狭窄」の治療法の一つに、切らずに治すことのできる「頚動脈ステント留置術CAS)」と呼ばれる”カテーテル手術”があります。

今回はこの頚動脈ステント留置術について、手術適応や実際の治療法、そして治療に伴う合併症について解説していきます。

※ CAS:Carotid Artery Stenting(頚動脈ステント留置術)

 

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頚動脈ステント留置術(CAS)の手術適応は?

頚動脈狭窄の外科治療に「頚動脈内膜剥離術」という手術がありますが、これは全身麻酔が必要になる手術なので、次に挙げるような患者さんには手術リスクが高くなるため行うことができません。

 

心臓の病気(心不全、冠動脈疾患など)

肺の病気

・反対側の頚動脈がつまっている

・反対側の喉頭神経が麻痺している

首の手術放射線治療をしたことがある

・頚動脈内膜剥離術(CEA)を行なったが、再狭窄した

 

このような患者さんは安全に頚動脈内膜剥離術を行うことができないため、比較的体に負担が少なくてすむ「頚動脈ステント留置術」を選択するのです。

また頚動脈の狭窄した部位が顎の骨で隠れてしまって手術が困難な場合も、血管の中から治療することができる頚動脈ステント留置術を行います。

 

頚動脈ステント留置術(CAS)はこんなカテーテル手術です

頚動脈ステント留置術(CAS)は、局所麻酔で行うことができるカテーテル手術です。

脚の付け根にある太い血管からカテーテルを入れて、頚動脈狭窄を内側から治す手術ですが、その手順は次の5つのステップにわけることができます。

 

① 血栓が脳へ飛ばないように、脳へつながる血管にフィルターを張る

② 狭窄した頚動脈をバルン(風船)を膨らませて少し拡げる

③ 少し拡がったところにステントを留置して、さらに拡げる

④ ステントの内側からもう一度バルンを膨らませて、仕上げの拡張をする

⑤ フィルターに溜まっている血栓を回収してくる

 

この手順を踏まえて、実際の頚動脈ステント留置術の実際の動画を見てみましょう!

 

 

このステント治療が開発されるまでは、ただバルンを膨らませて狭窄した頚動脈を拡げるだけの治療が行われていました。

しかも治療中に飛んでいく血栓を回収するフィルターもなかったので、治療はしたものの血栓がつまって脳梗塞になったという患者さんもいました。

道具の進歩とともに安全で確実な治療ができるようになってきているのです ^ ^

 

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頚動脈ステント留置術(CAS)の合併症3つ

頚動脈ステント留置術(CAS)は、狭窄した頚動脈を内側からステントで拡げて治す治療ですが、やはり心配されるのが手術による合併症です。

切って治す「頚動脈内膜剥離術」と比べると、患者さんの体にかかる負担は小さいものになりますが、ステント留置に伴う特殊な合併症もあります。

それでは頚動脈ステント留置術で起こる、主な合併症3つを紹介していきましょう。

 

脳梗塞

まず1つ目は「脳梗塞」です。

頚動脈が狭くなっている部分を治療する時に、プラークで狭くなっている部分をカテーテルが通過しなければなりません。

この時にプラークを傷つけると、破れたところから血栓が飛んでいくことがあります。

またステントで狭窄部位を拡げる時には、プラークが破れて血栓が飛び出してくることがあります。

これらの操作でできた血栓が、血流に乗って脳の血管につまってしまうと、新たな脳梗塞を起こすことになるのです。

 

しかし近年、頚動脈ステント留置術の合併症で起こる脳梗塞を予防するために、飛んでいく血栓をフィルターで捕まえたりする新しい道具がどんどん開発されています。

これらの道具を組み合わせることで、合併症として起こる脳梗塞を未然に防ぐことができるようになってきているのです。

 

過灌流症候群

プラークで狭くなっている頚動脈をステントでいきなり拡げると、脳への血流が一気に増えることになります。

急に増えた脳血流で、今まで血流が不足していた脳がびっくりして、以下のような症状を起こしてしまうことがあります。

 

頭痛

痙攣(けいれん)

脳出血

 

これは「過灌流症候群」(かかんりゅう症候群)と呼ばれる恐い合併症で、「バイパス手術」や「頚動脈内膜剥離術(CEA)」でも起こることがあります。

この過灌流症候群による最悪の事態は「脳出血」になりますが、過灌流症候群をなんとかして乗り切るためには、厳密な血圧管理が必要になります。

血圧を薬で下げることによって脳血流のコントロールを行い、徐々に脳を慣れさせていく治療を行います。

 

高血圧、脳出血

 

徐脈・血圧低下

脈拍が遅くなる「徐脈」と「血圧低下」は、頚動脈ステント留置術でほぼ必発の合併症になります。

頚動脈の分岐部のところには「頚動脈洞」と呼ばれる血圧を感知するセンサーがあるのですが、頚動脈が狭窄する部分とほぼ同じ場所になることが多いです。

 

狭窄部位にステントを留置して拡げると、その血圧センサーが「血圧が上昇した!」と勘違いの反応を起こし、血圧を下げたり脈拍を下げたりする反射が起きてしまうのです。

狭窄部位を拡げる前に、あらかじめ脈拍や血圧をあげるような薬を投与するのですが、ステントを留置した後も数日間に渡って血圧が下がりっぱなしの患者さんもいます。

 

まとめ

脳梗塞の原因となる頚動脈狭窄の治療は次の3つがあります。

 

内科的治療(抗血小板薬による治療)

頚動脈内膜剥離術(CEA)

頚動脈ステント留置術(CAS)

 

どの治療法を選択するかは、狭窄の度合いプラークの性状、そして患者さんの健康状態によって決定されるのですが、高齢化社会に伴って、より体に負担がかからない頚動脈ステント留置術が選択されることが多くなってきています。

また若くて全身状態のよい患者さんでも、外科的手術治療よりも侵襲の少ないカテーテル治療を希望される方が多いです。

時代の流れ的にはそれでよいと思いますが、ただ全ての患者さんが「頚動脈ステント留置術」を選択するべきではありません。

 

キーワードは「ソフトプラーク」です。

 

ソフトプラークとは”柔らかいプラーク”と言い換えることができますが、この柔らかいプラークを内側からステントで拡げると、必ずプラークが破れて小さな血栓が脳へ飛んで行ってしまいます。

またソフトプラークの患者さんがこのステント留置術を受けた場合、せっかく治療したのにまたプラークが成長してきて頚動脈が狭窄してしまう患者さんも時々見受けられます。

どの治療法が優れているのか?という問題は、いまだ学会でも議論され続けていて結論は出ていませんが、頚動脈狭窄に対する治療法の選択に関しては、十分検討された上で決定しなければならないのです ^ ^

 

それではまた!

 

脳出血、脳梗塞、バイパス手術