「脳梗塞」は脳の血管が血栓によって突然つまってしまい、手足の麻痺や言語障害など重篤な症状を起こす恐い病気です。
脳梗塞は発症から4.5時間以内であれば、t-PAによる血栓溶解療法でつまった血栓を溶かす治療を行うことができますが、4.5時間以上経過してから病院に搬送される患者さんはもう助からないのでしょうか?
実は発症から8時間以内であれば、脳の血管につまった血栓をカテーテル治療で回収することが可能なのです。
以前であれば、もう助からないと諦めていた脳梗塞を新しい技術で助けることができるようになったのです。
今回は、血管の中から直接血栓を回収する4つのカテーテル手術について詳しく解説していきます。
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【目次】
血栓回収治療はどんな時にするの?
まずはどのような場合にカテーテルを用いた血栓回収治療するかを3つ挙げてみましょう。
・t-PAによる血栓溶解療法を行なっても血栓が溶けなかった場合
・出血しやすい持病があって、血栓溶解療法を行うことができない場合
・脳梗塞を発症してから4.5時間を越えてしまった場合
まず大前提としては、発症から4.5時間以内の脳梗塞は必ずt-PAによる血栓溶解療法を考えなければなりません。
しかし以上の事情でt-PAによる血栓溶解療法を行うことができない脳梗塞患者さんは、カテーテルによる血栓回収治療を行います。
ただしこのカテーテル治療もすべての脳梗塞患者さんが受けることができる訳ではありません。
カテーテル治療を受けることができない患者さんの条件は次の2つになります。
・脳梗塞発症から8時間を越えている場合
・MRIやCT検査で、脳梗塞が完成してしまっている場合
要するに時間が経過しすぎて脳梗塞がすでに完成してしまった場合は、たとえ血栓をカテーテルで回収しても助からないということになります。
逆に血栓を回収して脳の血流を再開させてしまうと、脳に大出血を起こして患者さんの状態がさらに悪くなってしまう可能性が高くなります。
「Time is brain!」
脳梗塞治療は時間との戦いになります!
※「t-PAによる血栓溶解療法」の詳しい話はこちらの記事へ→
Meriリトリーバー
Merciリトリーバー(以下「メルシー」と呼びます)は、2010年4月に日本で初めて使うことができるようになった脳血栓回収機器です。
メルシーによる血栓回収がどんな治療なのか、まずは一目瞭然の動画を見てみましょう!
メルシーは先端が”らせん状”になった柔らかいワイヤーで、血栓を絡めてとって回収する機器です。
メルシーで治療した場合、つまった脳血管を約80%の確率で再開通させることができるのですが、血管を損傷して脳出血を起こすこともあり治療の難易度は高いです。
アキラッチョもメルシーを使っていましたが、ワイヤーが硬くて危険だなあという印象が残っています。
しかし新しい血栓回収用の道具が承認されてきてからは、メルシーが使われることはほとんどなくなってきています。
Penumbraシステム
2つ目はPenumbraシステム(以下「ペナンブラ」と呼びます)で、2011年に使用が許可された血栓回収機器です。
先ほどのメルシーと違い、ペナンブラは血栓を砕きながら吸引ポンプでその砕いた血栓を回収するシステムになります。
ペナンブラが血栓を砕いて吸引回収している動画を見てみましょう。
最近になって血栓を一塊りで吸引回収することも可能になり、短時間で血流を再開させることができるようになりました。
つまった血管の再開通率は約90%であり、比較的安全に血栓回収治療を行うことができるのでペナンブラを好んで使う脳神経外科の先生もいます。
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Solitaire FR
3つ目はSolitaire FR(以下「ソリティア」と呼びます)で、2014年に認可された血栓回収機器です。
このソリティアはステント型血栓回収機器(ステントリトリーバー)と呼ばれており、先端が開いたメッシュ状のステントに血栓をからめて回収するという特徴を持っています。
ソリティアが血栓をからめ取ってくる様子は次の動画を参照してください。
脳血管の中につまっている血栓を、内側からメッシュ状のステントを広げてガッチリと保持し、そのままズルズルと引っ張り出すという方法になります。
このソリティアによる脳血管の再開通率は約90%と高く、メルシーに比べて安全性も高くなっています。
Trevo ProVue
4つ目はTrevo ProVue(以下「トレボー」と呼びます)で、先ほどのソリティアと一緒に2014年に認可されています。
このトレボーもステント型血栓回収機器で、本体はらせん状メッシュのステントなのですが、先ほどのソリティアと違って先端部分が閉じてチップ状になっている特徴があります。
トレボーの血栓回収の動画を紹介します。
このトレボーも再開通率は約90%と高く、最初のメルシーと比べて安全に治療を行うことができます。
僕もトレボーを使って治療していましたが、使った印象を一言で言うならメルシーよりもワイヤー操作が”柔らかい”です。
変な力を入れてカテーテルやワイヤーを動かす必要がないので、メルシーよりも事故が起こりにくいはずです。
このようにどんどん優れた血栓回収機器が開発されているのは本当に頼もしいですね^ ^
まとめ
今回は4つの血栓回収機器を紹介しました。
実際の治療の流れとしては、発症から4.5時間以内の脳梗塞の患者さんが救急搬送されてきたら、まずt-PAによる血栓溶解治療を行います。
そのままカテーテル室へ移動し、脳血管カテーテル検査をすることで、まだ血栓がつまっているかどうかを調べます。
つまった血管が再開通していればOKなのですが、まだつまったままの状態であればすぐに血栓回収治療に移ります。
しかしこの一連の脳梗塞治療ですが、実は全ての病院でできる訳ではありません。
最初に行うt-PAによる血栓溶解療法は、その講習を受けた先生しか治療は許可されていません。
またカテーテルによる血栓回収治療は、日本脳神経血管内治療学会の厳しい試験をパスした専門医の先生でないと行うことができないのです。
24時間365日体制で、ここまでの治療ができる病院がまだまだ少ないのが問題です。
いずれにしても脳梗塞の治療は時間との戦いになります。
脳梗塞かな?と思われるような初期症状があれば、すぐに脳神経外科の先生がいる病院を受診しましょう。
血栓溶解療法であれば神経内科の先生でもできますが、血栓回収などのカテーテル治療や、出血した時の手術は脳神経外科の先生にしかできませんから^ ^
それではまた!