「隠れ脳梗塞」とは、手足の麻痺や言語障害などの症状が全く出ない脳梗塞のことで、専門的には「無症候性脳梗塞」とよんでいます。
この隠れ脳梗塞は、頭痛などで脳のCT検査をした際に、たまたま見つかる場合が多いです。
また脳ドックでMRI検査をした時にも見つかることがあり、「脳梗塞があります」とお伝えすると、脳ドックを受けた方にはかなりの動揺が走ります。
今回は「隠れ脳梗塞」が見つかった時に、じゃあどうすればよいのか?ということを中心に解説していきます。
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【目次】
隠れ脳梗塞とは?
脳神経外科の外来診療をしていると、頭痛やめまいの患者さんがたくさん来院されます。
脳腫瘍などの悪い病気がないかどうかを確かめるために、CTやMRIといった脳の検査を行うことがありますが、その際に頭痛とは全く関係のない脳梗塞の跡(= 隠れ脳梗塞)が、たまたま見つかることがあります。
アキラッチョ「○△さん、頭痛の原因になるような悪い病気はないのですが、隠れ脳梗塞がありますね」
と検査結果を説明した時に、こちらとしては「悪い病気がない」という方でまず安心してほしいのですが、
患者さん「えっ!先生!脳梗塞があるんですか!?」
患者さんの家族「脳梗塞があるんですか!?おじいちゃん、入院しないとダメなんですか!?」
患者さん「わしはもうダメなんですか・・・」
と、こんな感じでパニックになってしまい、最後までゆっくり説明を聞いてくれない患者さんも多いです。
「隠れ脳梗塞」という言葉が出た瞬間に、頭痛のことは蚊帳の外で、頭の中は脳梗塞一色になってしまいます。
この隠れ脳梗塞ですがCTやMRI検査で「脳梗塞の跡」があるだけで、全く症状がありません。
したがって、いつ起こしたか?ということも誰もわからないのです。
脳梗塞を起こしたことに気がつかずに生活をしてきたので、じゃあこのまま放っておいても大丈夫なのかな?と思ってしまいそうです。
しかし、隠れ脳梗塞を起こしたことがある人は、起こしていない人よりも脳卒中になる危険が約2倍になるというデータがあります。
そして脳卒中以外にも、次に挙げるものとの関連性が証明されています。
・死亡のリスクが高くなる
・肺炎を起こしやすくなる
・認知症になりやすくなる
・歩行状態が悪くなる
・慢性腎臓病の患者さんでは、腎臓の機能が悪化する
たとえ症状がなくても、隠れ脳梗塞が見つかった場合は、放っておくわけにはいかないことがわかります。
隠れ脳梗塞の治療法は?
それではこの隠れ脳梗塞が検査でたまたま見つかった場合はどうすればよいのでしょうか?
”隠れ”とは言ってもやはり”脳梗塞”には違いないので、血液をサラサラにする「抗血小板薬」を飲んで治療しなければならないのでしょうか?
その点について、脳卒中治療ガイドラインには次のように明記されています。
無症候性脳梗塞に対する抗血小板療法は科学的根拠がないので、勧められない(グレードC2)。
引用:「脳卒中治療ガイドライン2015」より
意外かもしれませんが、隠れ脳梗塞が見つかったからといって、他の脳梗塞と同じように血液をサラサラにする薬を飲むことは、逆に”勧められない”と言い切られています。
隠れ脳梗塞が見つかった人は、脳卒中になるリスクが約2倍になるということがわかっていますが、この脳卒中を起こす人の約21%が実は脳出血です。
隠れ脳梗塞があるからといって、安易に抗血小板薬を飲んでしまうと思わぬ脳出血を起こしてしまうこともあるため、血液をサラサラにする予防治療は逆に危険になります。
しかし、隠れ脳梗塞が見つかった人の中には、脳の血管や頚動脈が狭くなっていることがあります。
この場合は抗血小板薬を飲んで治療を行うことがありますが、やはり出血のリスクがあるということで、十分な血圧コントロールも合わせて行うことが重要になります。
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隠れ脳梗塞を予防するためには?
おさらいになりますが、隠れ脳梗塞が見つかると脳卒中を起こすリスクが約2倍にもなり、しかも認知症のリスクまで高くなります。
隠れ脳梗塞の人は脳出血のリスクも高くなるので、血液をサラサラにする抗血小板薬の治療もできないという、非常に厄介なものだということがわかりました。
それではこの隠れ脳梗塞を起こさないようにするためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?
隠れ脳梗塞の危険因子としてわかっているものを挙げてみましょう。
・高血圧
・メタボリックシンドローム
・2型糖尿病(インスリン治療まで必要のない糖尿病)
・高コレステロール血症
・頚動脈の動脈硬化
・慢性腎臓病
・睡眠時無呼吸症候群
これら隠れ脳梗塞の危険因子と考えられている病気は、すべて生活習慣に関わるものになります。
不摂生を続けることで「メタボリックシンドローム」となり「高血圧」「糖尿病」「高コレステロール血症」を引き起こします。
これらの病気はさらに「血管の動脈硬化」や「腎機能の悪化」につながります。
ちなみに「睡眠時無呼吸症候群」は「肥満」によって起こります。
いずれの危険因子も一連のものになるので、隠れ脳梗塞の予防のためには、やはり生活習慣の改善が最も重要になるのです。
また身体活動性が高い人は、隠れ脳梗塞のリスクが50%低下したというデータもあります。
脳卒中や認知症のリスクを高める”隠れ脳梗塞”を予防するためにも、規則正しい生活+運動習慣を身につけることが一番重要なのですね ^ ^
それではまた!
※ちなみのこの人は、アキラッチョ本人ではありません。