くも膜下出血の”超”危険な合併症!脳血管攣縮の症状や治療について解説

脳血管攣縮、くも膜下出血

 

脳動脈瘤の破裂によって起こるくも膜下出血ですが、治療法は「クリッピング術」または「コイル塞栓術」になります。

治療を終えた段階でホッと一安心したいですよね?

しかし、くも膜下出血の本当の勝負は”術後”から始まるのです。

今回はくも膜下出血の最大の合併症である「脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)」について、症状や治療法など詳しく解説していきます。

 

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そもそも脳血管攣縮ってなに?

そもそも「脳血管攣縮」ってなんなのでしょうか?

その名前の通りですが、脳の血管がギューっと縮んで、血液が流れにくくなる状態のことをいいます。

くも膜下出血によって脳の表面は血まみれになるのですが、この血液にさらされた脳血管が刺激を受け、日を追うごとに縮んで細くなってくるのです。

 

脳の血管が細くなると血液が流れにくくなるため、脳に十分な酸素や栄養を送ることができなくなります。

その結果、脳細胞が酸欠状態になり、脳梗塞を起こすのです。

脳血管攣縮」=「脳梗塞と考えてもよいでしょう。

くも膜下出血を起こしたのに、さらに脳梗塞まで起こすって・・・ツライですよね(泣)

 

この脳血管攣縮ですが、くも膜下出血後の4〜14日の期間に起こることがわかっています。

患者さんの中には、14日を越えても脳血管攣縮を起こす場合もあります。

脳血管攣縮は「くも膜下出血の最大の敵」と見なされており、脳血管攣縮だけを研究する学会もあるほどなのです!

 

絶対に見逃せない!脳血管攣縮の症状3つ!

くも膜下出血後の4〜14日の期間に起こる脳血管攣縮ですが、病態としては「脳梗塞」になるので、脳梗塞になった時(またはなりかけた時)のような症状が起こります。

脳血管攣縮の初期症状を見逃すと、本当に脳梗塞になってしまうので取り返しのつかないことになります

それでは脳血管攣縮の代表的な症状を3つ紹介していきましょう。

 

手足の麻痺

まず1番わかりやすいのが「手足の麻痺」になります。

通常であれば、片方の手足が同時に動かしにくくなってきます。

すなわち右手と右足が同時に動かしにくくなったり、また反対に左手と左足の動きが同時に悪くなったりするということです。

くも膜下出血の程度や広がり具合によっては、手だけに麻痺症状が出現したりする場合もあるので、手足4本が左右さなくきちんと動くかどうか、常にチェックしておく必要があります。

 

呂律が回らない

次は呂律が回りにくくなる「構音障害(こうおんしょうがい)」と呼ばれる症状です。

脳血管攣縮を起こした時は、呂律が急に回りにくくなって、スムーズに喋ることができなくなる患者さんがいます。

中には言葉を話すことができなくなる「失語症(しつごしょう)」を起こす患者さんもいます。

 

くも膜下出血の手術後の患者さんだからといって、話しかけたらダメってことはありません

しっかり話しかけてあげて、目を覚まさせてあげると同時に、会話がきちんとできるかどうかもチェックする必要があるのです。

 

意識が悪い

脳血管攣縮が本当にひどくなると、意識が悪くなってきます。

脳を栄養する太い血管や、脳の大部分の血管が同時に攣縮を起こして細くなることによって「意識障害」を起こすのです。

 

脳血管攣縮による意識障害は、かなりピンチの状態になります。

このような状態になってからは、なかなか回復が見込めないことが多いです。

したがって意識障害に陥ってしまう前に、脳血管攣縮をできるだけ早期に発見することが重要になります。

 

脳血管攣縮、くも膜下出血.jpg

 

脳血管攣縮を診断するための5つの検査!

できることなら脳血管攣縮で脳梗塞になってしまう前に、なんとかして早期発見したいものです。

ここでは脳血管攣縮を早期発見するために、日常診療で行われている5つの検査について紹介していきます。

 

経頭蓋的ドプラー検査(TCD)

まず、一番かんたんにベッドサイドで行うことができる検査が「経頭蓋的ドップラー検査」(TCD)になります。

患者さんのこめかみのところで超音波検査を行い、脳の血管が細くなっていないかどうかを調べます。

脳血管攣縮で細くなった血管は、血流が速くなります。

少し難しい話になりますが、平均血流速度が120〜150cm/秒以上になったり、1日に50cm/秒以上の増加がある場合は、脳血管攣縮を起こしている可能性が高くなるので、次に挙げるような画像検査を行うことになります。

 

MRI・MRA

MRI・MRA検査は、造影剤を使わずに脳の血管を調べることができる便利な検査です。

患者さんの症状や、経頭蓋的ドップラー検査で脳血管攣縮を疑った場合は、できるだけ早くMRI検査を行います。

そしてMRA検査で脳の血管が細くなっていたり、MRI検査で脳梗塞を起こしかけているようであれば、あとで挙げるカテーテル治療を緊急で行います。

もし脳血管攣縮が確認されれば、土日・深夜とか関係なく、緊急で治療を行わなければなりません

 

造影CT

造影剤を使ったCT検査を「CT-AngiographyCTA)」と呼びます。

脳血管の状態が非常にわかりやすく、また脳動脈瘤をはさんでいるクリップの状態もわかります。

脳血管攣縮を発見するには少し手間のかかる検査ですが、治療した脳動脈瘤やクリップのことも同時に調べるという点では、最も優れた検査になります。

 

SPECT

SPECT(スペクト)検査では、脳の血流分布を調べることができます。

脳血管攣縮を起こした血管が支配する脳の領域では、脳血流が低下して脳梗塞を起こしかけています。

SPECT検査では放射性同位体を注射することで、脳のどの領域に血流が低下しているのかを調べることができるのです。

 

しかし、このSPECT検査が24時間体制で行うことができる施設は限られています。

あくまでも補助的な検査なので、実際には行わなくても良い検査ではあります。

 

脳血管造影検査(カテーテル検査)

最後は「脳血管造影検査」です。

脚の付け根の血管からカテーテルを入れて脳の血管までスルスルと進め、造影剤を流してレントゲン写真を撮影します。

この検査のいいところは、脳血管攣縮と診断がつけばそのまま治療を行うことができる点になります。

脳血管攣縮が強く疑われる場合は、治療を行うことを前提で最初からカテーテル検査を行うこともあります。

 

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脳血管攣縮の5つの予防的治療!

脳血管攣縮は、くも膜下出血の出血量が多いほど起こりやすいことがわかっています。

くも膜下出血患者さんの約70%に脳血管攣縮が起こり、実際に手足の麻痺などの症状が出現する患者さんは約30%にも及びます。

せっかく手術が上手くいったのに、脳血管攣縮で脳梗塞になってしまっては悔やんでも悔やみきれません。

この脳血管攣縮を予防するために、実際行われている代表的な治療法を5つ紹介していきましょう。

 

脳槽ドレナージ

脳槽ドレナージ」とは、クリッピング術を行う際に「脳槽(のうそう)」と呼ばれる脳のすき間に置いておくチューブのことです。

この脳槽ドレナージから、脳の中に残っている血腫を排出させることによって、脳血管攣縮を予防します。

脳槽ドレナージチューブから、血腫を溶かす薬を注入することもあります。

長期間留置していると感染症の原因にもなるので、術後のCT検査で血腫がなくなったことを確認できれば早期に抜去します。

 

ファスジル

脳血管攣縮に対する全身的な薬物療法として、Rhoキナーゼ阻害薬の「ファスジル」が効果的です。

脳卒中治療ガイドライン2015にも次のように紹介されています。

 

全身的薬物療法として、ファスジルやオザグレルナトリウムの投与が強く勧められる(グレードA)。

 

このファスジルは、ひどい脳血管攣縮を起こしてしまった時の血管内治療にも使われる薬です。

脳血管攣縮の治療では主役になる薬です。

 

オザグレルナトリウム

オザグレルナトリウム」は脳梗塞の治療でも使われる抗血小板薬です。

先ほど引用した通り、脳卒中治療ガイドライン2015でも評価の高い点滴治療薬になっています。

また脳血管攣縮で脳梗塞を起こしてしまった場合には「エダラボン」という脳保護薬も投与する場合もあります。

 

ニカルジピン

二カルジピン」は本来血圧を下げる薬です。

この二カルジピンは、血管を拡げることによって血圧を下げるのですが、この血管を拡げる作用が脳血管攣縮に有効なのです。

 

ただし二カルジピンの効果が強すぎて、あまりに血圧が下がりすぎると脳血流の低下を起こします。

脳血管攣縮を起こして狭くなっている脳の血管に、血圧低下による脳血流の減少を起こすと、血行力学性脳梗塞を起こしてしまうので注意が必要です。

また二カルジピンは刺激の強い薬なので、注射をしている血管にひどい炎症を起こしてしまう場合があります。

 

シロスタゾール

最後は内服薬の「シロスタゾール」です。

このシロスタゾールは脳梗塞の再発予防薬で、血液をサラサラにする作用がありますが、それ以外にも血管を拡げる作用をあわせ持っています。

脳梗塞を起こしていなければ保険外使用になりますが、シロスタゾールは脳血管攣縮予防に効果的であるという報告はたくさんあるので、僕たちは積極的に投薬するようにしています。

(保険で認められないからといって、効果のある薬を使わないのは患者さんにとって不利益ですから)

 

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脳血管攣縮を起こした時の治療法はこれだ!

予防治療を十分に行なっているにも関わらず、「手足の麻痺」などの症状を伴う脳血管攣縮を起こしてしまう患者さんも中にはいます。

この症状を伴うような重症脳血管攣縮に対する”最後の切り札について紹介していきましょう!

 

ファスジルの選択的動注療法

脳血管攣縮の予防治療のところで「ファスジル」という薬が出てきましたが、このファスジルを脳血管攣縮を起こしている血管に、カテーテルを使って直接投薬するのが「ファスジルの選択的動注療法」になります。

点滴で全身投薬するのに比べ、ファスジルが狭くなっている血管に直接作用するので非常に効果的なのです。

 

経皮的血管形成術(PTA)

経皮的血管形成術PTA)」は、血管の中から小さな風船(バルン)を膨らませることで、脳血管攣縮で狭くなっている血管を直接拡げる治療法になります。

こちらもカテーテルを用いた血管内治療で、重度の脳血管攣縮に対して非常に効果的です。

しかし経皮的血管形成術(PTA)は、血管の中から無理矢理(もちろん慎重に…)風船で拡げるので、血管の壁が裂けて頭の中に出血するような合併症の危険性もあります。

 

まとめ

脳血管攣縮は、くも膜下出血後の4〜14日の間に襲いかかってくる合併症です。

徐々に症状が出現する患者さんもいれば、突然意識が悪くなるような患者さんもいます。

 

僕が研修医の頃、くも膜下出血でクリッピング術をした、若いお父さんの患者さんがいました。

術後7日目頃でしたが、朝まで元気にご飯を自分で食べていたのに、お昼頃急に意識が悪くなり半昏睡状態になったのです。

緊急で血管造影検査をしたところ、頭の大部分の血管が脳血管攣縮を起こして、ほとんど映らなくなっていました

ファスジルの選択的動注療法を行いましたが、最終的に脳の大部分が脳梗塞を起こしてしまい、残念ながら亡くなってしまいました

 

若い患者さんほど脳の血管が柔らかいので、激しい脳血管攣縮を起こしやすくなります

逆に動脈硬化でガチガチの血管をしている高齢者のくも膜下出血患者さんは、脳血管攣縮を起こしにくいことも経験的にわかっています。

また高齢者の患者さんの中には、くも膜下出血後の3週間目に脳血管攣縮を起こす患者さんもいます。

 

くも膜下出血は「クリッピング術」や「コイル塞栓術」をしたら終わり!という訳でなく、実は最初の2週間が本当の勝負になるのです。

初期症状の発見の遅れが患者さんの予後を決定づけるので、くも膜下出血を起こした患者さんを十分観察する必要があります

できるだけ早期発見に努めるため、最初の2週間は医師・看護師だけでなく、患者さんのご家族・お見舞いの知人などなどみんなで目を光らせておく必要があるのです。

脳血管攣縮を早期発見するためにも、お見舞いは”足繁く”でお願いします ^ ^

 

それではまた!

 

頭痛、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血