頭痛がひどい時、みなさんは何科を受診されるでしょうか?
病院によっては脳の専門の先生がいない病院もありますよね。
片頭痛の患者さんの約7割が、最初の診察で誤診されていたというような報告もあります。
今回は、頭痛を起こして病院を受診した時に、できるだけ正しい診断と治療を受けるための、患者さん側の心構えについて紹介します。
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【目次】
頭痛は何科を受診すればいいの?
まず最初に悩むのが、頭痛の時は何科を受診すればよいか?という問題です。
かかりつけのクリニックを受診する人もいれば、大きな病院の脳神経外科を受診する人もいます。
頭痛を診てくれるクリニックや病院の各診療科のメリット・デメリットなどを紹介します。
かかりつけのクリニック
体の調子が悪くなった時にすぐに診てくれるのが、かかりつけのお医者さんです。
中には子供時代からずっと診てもらっていて、みなさんご自身の病気のことなら何でもわかってくれているような先生もいらっしゃると思います。
気軽に相談に乗ってもらうことができるというメリットはありますが、クリニックや診療所にはCTやMRIといった頭の検査をするための機械がない場合があります。
一般的な頭痛薬で様子をみていたら、後で思わぬ重篤な脳の病気が見つかったという患者さんも中にはいます。
頭の精密検査をできないということがデメリットになります。
内科
規模の大きな病院になると、脳の専門でない内科の先生が最初に頭痛を診てくれることがあります。
脳の専門じゃないのに大丈夫なの?って不安になるかもしれません。
しかし内科の先生は非常に勉強家の先生が多いので、きちんと診断・治療をしてくれます。
(もちろん、脳神経外科医であるアキラッチョもちゃんと勉強してますよ!)
大きな病院の内科の先生に診てもらうメリットを挙げてみましょう。
・頭痛に関する知識もあり、全身の病気も診てもらえる
・CTやMRIの検査もしてもらうことができる
・必要あれば、同じ病院にいる脳専門の先生に相談してもらえる
ということになり、いいことだらけですよね。
デメリットをあげるとすれば・・・待ち時間が長すぎる!ということくらいでしょうか。
でも待ち時間が長いのって、本当にツライですよね( T_T)\(^-^ )
神経内科
神経内科は神経の内科的な病気を専門に診てくれる診療科です。
神経病のエキスパートで、僕たち脳神経外科医も彼らの知識には舌を巻くほどです。
神経内科の先生に頭痛を診てもらえるのであれば鬼に金棒ですが、致命的なデメリットがあります。
それは、規模の大きな病院なのに神経内科の先生がいないことがある!ということです。
ネッシーやツチノコレベルではありませんが、神経内科がある病院を見つけるのは少し骨が折れます。
脳神経外科
「脳のことはやっぱり脳神経外科でしょう!」
と思っていただけることが、僕たち脳神経外科医を奮い立たせてくれます(笑)
脳神経外科のある病院では「頭痛ならまず脳神経外科へ」という病院が多いです。
(中には、ただの風邪で頭が痛いという患者さんもいます・・・)
脳神経外科で頭痛を診てもらうメリットとしては「死んでしまうかもしれない脳の病気」を絶対に見つけてくれる点に尽きるでしょう。
近くの病院の内科の先生が見落としたような「くも膜下出血」を、僕ですら過去何回も見つけてきました。
優秀な内科の先生でも気づけないような「わずかな異常」に脳神経外科医は気がつきます。(本当に)
しかしデメリットもあります。
脳神経外科の先生は、手術・カテーテル治療・検査・救急対応・外来などなどで大忙しなのです。
脳神経外科の手術は非常に難しく、時間がかかるものが多いです。
したがって病院に脳神経外科があるのに、手術で忙しすぎて脳神経外科で診てもらえないということになる場合も多いです。
僕の師匠である上山博康先生がこう言われてました。
「脳神経外科医は絶滅危惧種なんだ」
そうなんだ、僕たちはアフリカゾウやジャイアントパンダと一緒なんだ。
若かりし僕はそう思っていました。
あまりにも忙しすぎるせいで、優しくなれない(コワイ)脳神経外科の先生がいても、優しく見守ってあげてください。
(コワイ先生も本当は根が優しくて、患者さん思いなんですよ・・・)
救急外来
休日や夜間に頭痛で救急外来を受診する時はどんな時でしょうか?
ズバリ「突然の頭痛」が起こった時です。
この突然の頭痛に「吐き気」が加われば、脳の危険な病気を起こしている可能性は非常に高くなります。
状況次第では救急車を呼んだ方がよい場合もあります。
突然の頭痛の原因となる「くも膜下出血」や「脳動脈解離」といった病気は生命に関わって来ることが多いので、くれぐれも「突然の頭痛」にはご注意ください。
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頭痛を正しく診断してもらうための6つのポイント
頭痛を診てくれる先生が脳の専門の先生ではなくても、ご自身の頭痛のことをきちんと正確に伝えることができれば、よほどのことがない限り誤診されることはありません。
ここでは頭痛を正しく診断してもらうために、医師に伝えなければならない6つのポイントについて紹介します。
1. いつ、どのように頭痛が始まったか?
頭痛がいつから始まり、またどのように始まったのかということは、危険なタイプの頭痛を診断する上で重要な情報になります。
「何年も前から続いている」のであれば慢性的な頭痛の可能性が高いため、緊急で検査や治療をする必要はありません。
逆に「今朝、出勤している時に突然頭痛が…」というような場合は「くも膜下出血」など緊急を要する頭痛の可能性が高くなります。
この場合は急いで検査をし、くも膜下出血であればそのまま手術になることもあります。
2. どれくらいの頻度で起こり、どれくらい続く?
頭痛の頻度と継続時間を知ることは、頭痛を正しく診断するために必要です。
それと同時に頭痛薬の種類や投薬方法を決める上で重要な情報になります。
毎日のように朝から晩まで続くような頭痛であれば、頭痛薬を一日3回飲んでいただく患者さんもいますが、漫然と飲み続けていると薬物乱用頭痛を起こす場合があります。
頭痛薬の量は減らせるに越したことはありません。
そのためにも頭痛の頻度や継続時間を正しく認識する必要があります。
ちなみに「薬物乱用頭痛」については、以下の記事で詳しく解説しています。
3. どんな時にひどくなる?
例えば、体を動かすと頭痛がひどくなる場合は「片頭痛」になります。
片頭痛になった時は安静にしている方が楽になります。
一方で、頭痛がひどくてじっとすることができないのが「群発頭痛」です。
逆に、のたうち回るくらい動いた方が頭痛症状が楽になることがあります。
どんな時に頭痛がひどくなるか?ということは頭痛のタイプを見分けるために必要です。
「片頭痛」と「群発頭痛」については、以下の記事で詳しく解説しています。
4. どんな痛み?
患者さんが頭痛をどのように感じているか?ということも診断に必要となります。
僕の頭痛外来に来院される患者さんの痛みの表現は次のものが多いです。
・ズキズキする
・頭が重い
・ギューっと締めつけられる
・ビリビリする
・血管が脈を打つようにズキンズキンする
痛みの表現は人それぞれですが、頭痛を診療する側にとってこのような表現が、頭痛の診断に非常に役立ちます。
5. どこが一番痛い?
頭痛のする場所がどこか?ということも、頭痛診断には重要な判断材料になります。
一番痛い場所がおでこのところか?、それともこめかみのところか?
後ろ頭が痛い人や、頭全体が痛くなる人もいるでしょう。
痛くなる場所がいつも同じであれば、覚えておいて医師に伝える必要があります。
場所によっては頭以外の病気で頭痛を起こすことがあります。
部位別の頭痛については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
※「目の奥がズキズキと痛くなるのはなぜ?原因と対処法を解説!」
6. 頭痛以外の症状は?
最後は「頭痛以外の症状」です。
例えば吐き気がするとか、目の前にチカチカと光が見えるなど、頭痛以外の気になる症状は必ず医師に伝える必要があります。
この頭痛以外の症状が、正確な診断につながる場合も多いのです。
まとめ【医師からのアドバイス】
頭痛で病院を受診したのに、いろんな診療科をたらい回しにされた経験のある患者さんもいらっしゃると思います。
まずは頭痛に対する正しい知識を身につけて、自分の身はある程度自分で守らなければなりません。
また、中には「頭痛専門外来」をしている病院もあります。(僕もしていますよ)
どの病院で診てもらってもなかなか治らない頭痛持ちの方は、頭痛専門医のいる病院を受診するのもよいでしょう。
それではまた!