コレステロール値が高い人は「脂質異常症」と呼ばれていて、動脈硬化が原因となる脳梗塞や心筋梗塞などの病気にかかりやすくなります。
このコレステロール値を下げる薬がクレストール®︎です。
今回はこのクレストールの効果と気になる副作用について解説します。
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【目次】
クレストールってどんな薬?
クレストール®︎(一般名:ロスバスタチン)は2005年に脂質異常症の治療薬として開発されたスタチン系の薬です。
血液中のLDLコレステロール(悪玉)を強力に低下させる作用があるだけでなく、HDLコレステロール(善玉)を増やしたり、中性脂肪を下げる効果もあることがわかっています。
クレストールの作用機序ですが、肝臓でのコレステロール合成に必要な「HMG-CoA還元酵素」という物質を阻害することで、コレステロールの産生量を減らします。
コレステロールはエネルギー源でもあるので、コレステロールの産生量が減ると体内のエネルギー源が減ったと肝臓が判断し、エネルギー源であるLDLコレステロールを肝臓に蓄えようとします。
これらが相乗効果となって血中のLDLコレステロール値が下がり、脂質異常症による動脈硬化を予防することができるのです。
LDLコレステロールとは?
コレステロールは「悪玉」と「善玉」の2種類に分けられています。
まず「善玉」と呼ばれているのが「HDLコレステロール」で、体の中で余ったコレステロールが肝臓に運ばれていくものにあたります。
一方「悪玉」の方が「LDLコレステロール」で、血液にのって体中に運ばれていくコレステロールがこれにあたります。
悪玉のLDLコレステロールが増加すると、体の脂肪が増えて肥満になります。
また血管の壁に蓄積することで動脈硬化を起こし、プラークを形成します。
コレステロールと聞けば”動脈硬化の原因”というように悪いイメージしかわかないかもしれません。
しかしコレステロールには細胞の膜や副腎皮質ホルモンを作る材料としての役割もあり、生命を維持していく上で必要不可欠なものなのです。
したがって、体中に生命維持を担う材料としてのコレステロールを運んでくれるLDLは、人体にとってなくてはならないものなのです。
要するにHDLとLDLのバランスがうまくとれているということが重要なのです。
クレストールはこんな病気に効果があります!
クレストールは生活習慣病の「高コレステロール血症」や遺伝病の「家族性高コレステロール血症」など脂質異常症に対する治療薬です。
脂質異常症の患者さんは、全身の血管の動脈硬化が進むため、様々な病気を起こすリスクが高くなります。
クレストールはコレステロール値を下げるだけでなく、動脈硬化が原因となる病気の予防にもつながるのです。
それではクレストールの効果が期待される代表的な病気を3つ紹介しましょう。
脳梗塞
脳の血管が動脈硬化で細くなり、つまってしまう病気が「脳梗塞」です。
脳梗塞を起こしてしまうと、手足の動きが悪くなったり言語障害を起こすことがあります。
クレストールは脳や首の血管(頚動脈)の動脈硬化を予防することで、脳梗塞の発症を防いでくれるのです。
心筋梗塞・狭心症
心臓を栄養する血管の冠動脈が動脈硬化で狭くなると「狭心症」を起こします。
またこの冠動脈が完全につまってしまうのが「心筋梗塞」です。
左胸の痛み、動悸や息切れなどの症状があれば要注意です。
クレストールで動脈硬化を予防することや、喫煙者であれば禁煙をすることが、狭心症や心筋梗塞の予防につながります。
閉塞性動脈硬化症(ASO)
主に下肢の血管が動脈硬化で徐々に閉塞してしまう病気が「閉塞性動脈硬化症(ASO)」です。
足が冷たいなどの症状から始まり、重症化すると血流が途絶えてしまうので足が壊死してしまう恐い病気です。
高コレステロール血症は閉塞性動脈硬化症の原因になるので、クレストールを内服することでコレステロール値を厳重に管理をする必要があります。
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クレストールの3つの危険な副作用
クレストールの副作用の発生率は約11%と報告されています。
どんな薬にも副作用はありますが、このクレストールには知っておきたい副作用が3つあります。
代表的な3つの副作用を紹介していきましょう。
横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)
クレストールの内服を始めてから「筋肉痛」や「手足の力が入りにくい」などの症状が起こった場合、副作用の「横紋筋融解症」が考えられます。
筋肉が壊れた時に出る「ミオグロビン」という物質が尿に混ざり、赤褐色のおしっこが出ることもあります。
副作用の頻度としては0.1%未満と低いですが、腎障害、肝障害、アルコール中毒、甲状腺機能低下症などの持病を持っている方は、起こしやすいという報告もあります。
横紋筋融解症が重症化すると命に関わる危険もあるので注意が必要です。
肝機能障害
「体がしんどくなり倦怠感がある」「食欲がない」「皮膚や白目が黄色い」などの症状があれば、副作用として「肝機能障害」が考えられます。
クレストールは肝臓で働く薬なので、肝臓に負担がかかる場合があるからです。
肝臓の機能が悪い方は定期的な血液検査をする必要があります。
血小板減少
「手や足に青あざができる」「鼻血が出る」「おしっこに血が混じる」など出血しやすくなった時は「血小板減少」を起こしている可能性があります。
血液を固める働きを持つ血小板の数が少なくなるため、出血しても血液が固まりにくくなるのです。
ひどい場合には「脳出血」や「消化管出血」といった命に関わるような出血を起こしてしまう場合もあります。
やはり定期的な血液検査で、血小板数を調べておく必要があります。
これら3つの重篤な副作用以外にも、クレストールには以下のような副作用があります。
✔︎ 過敏症・アレルギー
✔︎ 発疹・かゆみなどの皮膚症状
✔︎ 間質性肺炎
✔︎ 便秘・下痢・腹痛などの消化器症状
✔︎ 頭痛・めまい
クレストール内服中にこれらの症状に気づいた場合は、早めに主治医に相談しなければなりません。
薬のメリットとデメリットを検討した上で、クレストールによる治療を続けるかどうかを判断する必要があります。
クレストールの副作用で”脱毛”って起こるの?
高コレステロール血症の治療薬の中には、副作用として「脱毛」があると言われている薬もあります。
頭皮の毛穴には毛包細胞という”毛の産生”に関与する細胞が存在します。
高コレステロール血症の薬がその毛包細胞の細胞膜を構成する脂質の合成を阻害したり、ホルモンの合成を阻害することで脱毛が起こると考えられています。
また高コレステロール血症治療薬の効果によって、髪の毛の栄養となるはずのコレステロールが不足するため、毛質が変化して脱毛するというメカニズムも考えられています。
一方で、クレストールの添付文書には副作用として「脱毛」の記載はなく、クレストールが脱毛の直接的な原因と考えられる根拠はないようです。
高コレステロール血症そのものが原因で、毛根を取り巻く毛細血管の血液粘稠度が高くなり、血行不良を起こすことが脱毛を起こすのではないか?という意見もあります。
いずれにしても、毛根の栄養不足が脱毛の原因になりそうですね。
クレストールと飲み合わせると危険なものはこれ!
コレステロール値が高い人は生活習慣の乱れが原因となっている場合が多いため、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を含め、その他にも病気を併発している場合があります。
そしてかかっている病気の数だけ、薬の種類も増えてきます。
それでは最後にクレストールと飲み合わせる際に注意が必要な薬を紹介していきましょう。
シクロスポリン
免疫反応が原因で起こる病気で、免疫抑制剤の「シクロスポリン」を内服している患者さんは、クレストールを内服することを禁止されています。
この2つの薬を併用することで、クレストールの血液中の濃度が約7倍まで上昇してしまい、横紋筋融解症などの副作用のリスクが高くなってしまうからです。
ベザフィブラート
腎臓の機能障害がある患者さんが、フィブラート系の高脂血症薬(ベザトールSR®︎)とクレストールを一緒に飲むと、横紋筋融解症のリスクが高くなることがわかっています。
いずれの薬も高脂血症の薬なので、併用する可能性はあります。
やむを得ずこの2つの薬を併用する場合は、定期的な血液検査をしておく必要があります。
大量のアルコール
大量のアルコールを飲む人がクレストールを内服すると、肝機能障害や横紋筋融解症を起こしてしまうリスクがあります。
過剰摂取のアルコールによって機能が弱った肝臓に、クレストールが負担をかけてしまうためです。
アルコールを大量に飲まれている人以外にも、肝臓の生理的機能が低下している高齢者のクレストール内服には注意が必要です。
また胎児への安全性も確立されていないため、妊婦さんがクレストールを内服することは原則的に禁止されています。
食生活の欧米化に伴い、生活習慣病は現代病となってきています。
クレストールをはじめ、脂質異常症の治療薬を内服する患者さんはこれからもどんどん増えていく可能性が高いでしょう。
薬には思わぬ副作用のリスクもあるので、自分の飲んでいる薬のことはよく知っておくようにしたいものですね。
それではまた!