若い人でも認知症を発症してしまう「若年性認知症」をご存知でしょうか?
高齢化の進む我が国では、65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症(認知症予備軍を含めて)にかかっていると言われています。
その一方で、64歳以下の若年者で認知症を発症している「若年性認知症」の患者さんが、全国で約37,750人(厚生労働省HPより)もいるという驚きの事実があります。
今回は、64歳以下の若い人で発症する「若年性認知症」について、原因や対処法など詳しく解説していきます。
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【目次】 [表示]
物忘れがひどくなった30歳代の女性
まずはアキラッチョの”物忘れ外来”を受診された、ある30歳代前半(いわゆるアラサー)の若い女性患者さんの話です。
最近、物忘れを自覚するようになり、ネットで調べてみたら「若年性認知症」という病気があることを知って来院されました。
物を取りに行っても何を取りに行ったのかを忘れたり、買い物でも書い忘れがよくあるということです。
色々と状況を知るために会話を続けていましたが、話のキレ味は抜群でとても認知症を疑わせるような印象はありませんでした。
”長谷川式認知症スケール”や”MMSE”といった認知症テストを行ないましたが、30点満点で特に問題ありません。
若い人でも脳の危険な病気によって物忘れ症状を起こす患者さんもいるので、脳のCT検査も行いましたが、予想通り全く異常ありませんでした。
物忘れを心配して受診される若い患者さんは時々いますが、果たしてこのような患者さんを「若年性認知症」と診断し、治療を開始しなければならないのでしょうか?
若年性認知症とは?
「若年性認知症」とは64歳以下で発症する認知症の総称になります。
2009年に厚生労働省が発表した調査結果をまとめると、以下の通りになります。
若年性認知症患者数は47.6人
総数は約37,800人
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また若年性認知症の原因となる病気は、以下のように報告されています。
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50歳くらいの若年性アルツハイマー病を発症するような患者さんもいれば、不運にも20歳くらいの若さで脳出血や脳梗塞を起こしてしまい、認知症状が後遺症として残ってしまうような患者さんもいます。
若年性認知症というのは、これらの病気が原因となって起こる認知症の総称になるので、患者さんによって治療法や対処法は全く異なります。
若年性認知症の患者さんは、次にあげる4つの症状で病気を発症します。
① 物忘れ(50.0%)
② 行動の変化(28.0%) ③ 性格の変化(12.0%) ④ 言語障害(10.0%) |
64歳以下の若年者でも、これらの症状が出現した人は「若年性認知症」の可能性があるので、すぐに病院を受診した方がよいでしょう。
また若年性認知症の患者さんを介護する人の約6割が、介護疲れによって”抑うつ状態”になるという報告(厚生労働省HPより)もあります。
若年性認知症の患者さんを直接介護する人たちも、心のケアが必要になる場合があります。
若年性認知症と診断された場合、どうすればよいか?
「若年性認知症」と診断された場合、まずは認知症状を悪化させないように予防をしなければなりません。
原因によって対処法は異なりますが、最も多い「脳血管性認知症」であれば、脳卒中の再発予防目的に生活習慣の改善を図るとともに、高血圧の薬や血液をサラサラにする薬(抗血小板剤)などによる治療が必要となります。
また若年性の「アルツハイマー病」であれば、認知症薬による治療を行わなければなりません。
それ以外にも、若年性認知症を抱えた本人や家族には、次のような不安が起こります。
仕事はどうなるのか?
生活を続けていくことができるのだろうか?
自分だけがこんな病気なのだろうか?
まずさしあたって、仕事や日々の生活を続けていくための方法を考えなければなりません。
若年性認知症と診断を受けた場合、一度退職してしまうと再就職が困難な場合が多いので、できるだけ今の職場で働けるように配置転換などの相談をする必要があります。
ご本人にあった働き方が続けられるように、障害者職業センター(兵庫県であれば「兵庫障害者職業センター」(078)881-6776)などの支援を受ける必要があります。
また認知症と診断された場合、初診日から6ヵ月を経過していれば、市や町の障害福祉担当課に「精神障害者保健福祉手帳」を申請し、障害者雇用枠に切り替えてもらうという方法もあります。
事業主側は「障害者雇用促進法」に基づいて、認知機能障害を理由とする差別が行われないように職場環境を整えて、適切な配慮をする必要があります。
様々な理由で仕事を続けることが困難な場合は、職場の労務担当に相談して「傷病手当金」の受給を受けることができます。
また若年性認知症と診断された日から1年6ヵ月を経過していれば「障害厚生年金」を申請することもできます。
これは日常生活に制限を受けるような病気や怪我で働くことが困難な場合、公的な年金として金銭的な援助を受けることができる制度で、最寄りの年金事務所に相談すれば大丈夫です。
他にも医療費の減免(市や町の障害福祉担当課に相談)や、子供の就学のための奨学金(学校や教育委員会に相談)、住宅ローン返済の債務弁済手続き、生命保険の支払いなど、経済的な負担を軽くしてくれるための制度があります。
若年性認知症と診断されたとしても、自分達だけで問題を抱え込むのではなく「家族の会」や「認知症カフェ」といった交流の場に出て情報交換をすることも重要になります ^ ^
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おわりに
それでは最後に”物忘れ外来”を受診された30歳代の女性に話を戻しましょう。
認知症検査や脳のCT検査をしても全く異常がなかったこの女性ですが、よくよく話を聞いてみると”物忘れ”の原因がわかりました。
原因は「朝から深夜までとにかく忙しすぎる」ということでした。
まだ小学生の3人の子供さんの世話や、早朝出勤・深夜帰宅の旦那の世話だけでなく、ご自身も理髪店を営んでいて、休まる瞬間がなく一日中大忙しとのこと。
これだけのことを同時に考えてこなし続け、朝から晩までバタバタしていれば、一つや二つくらい頭から抜けてしまうことってありますよね?(笑)
全く異常なく、むしろ僕も見習いたいくらいですということをお伝えしたところ、安心して笑顔で帰られました。
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”物忘れ外来”をしていると、本当にいろいろな患者さんやご家族がいらっしゃいます。
実際に「認知症」と診断して治療開始となる患者さんは、3人に1人くらいの割合でそれほど多くありません。
同じくらいの認知機能障害でも、一人暮らしの高齢者の方は認知症薬の治療を始めますが、サポートしてくれる家族と同居しているような高齢者の方であれば、認知症薬の治療を見合わせる場合もあります。
CTなどの画像検査で、かなりの脳萎縮があっても認知機能は全然保たれている人もいれば、脳萎縮がほとんどないのにひどい認知症をきたしているような患者さんもいます。
認知症というものは一概には診断・治療できない病気なのです。
いずれにしても早期発見・早期治療するに越したことはありません。
皆さんのまわりに物忘れが目立つようになった方がいれば、軽度認知障害(MCI)の可能性もあるので、最寄りの病院の”物忘れ外来”を受診してみましょう ^ ^
それではまた!