脳神経外科の外来診療をしていると、頭を強く打ってケガをしたという患者さんがよく来られます。
その患者さんの中に「たんこぶができているから大丈夫だとは思うんですけど・・・」と言われる方が多いです。
頭が打った時に「たんこぶ」ができる場合は本当に大丈夫なのでしょうか?
今回は、患者さんによく聞かれる「たんこぶ」についてのお話をしようと思います。
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【目次】
頭を打った時に「たんこぶ」ができる場合は大丈夫って・・・本当なの!?
頭を強くぶつけた時にぷく〜っと膨れてできる「たんこぶ」ですが、その中身は「頭皮の内出血」になります。
ぶつけた衝撃で頭皮の中の毛細血管が切れて出血し、行き場のなくなった血液が頭皮の中に溜まることで「たんこぶ」はできるのですが、これはあくまで頭皮の中だけの話です。
この「たんこぶ」ができた患者さんたちは、必ずと言っていいほど次のようなことを言われます。
「たんこぶができたから、大丈夫だとは思うのですが・・・」
またこれとは逆に「たんこぶができていないから、絶対にヤバイと思うのですが・・・」と言われるような患者さんもいらっしゃいます。
この「たんこぶができる時は大丈夫」というのは、結論から言うと大きな間違いで、単なる迷信です。
最初に説明した通りですが「たんこぶ」とはあくまでも頭皮の中だけの話なので、一番大切な脳とか脳を守っている頭蓋骨が大丈夫かという話は全くの別問題になのです。
「たんこぶ」ができていても、頭蓋骨を骨折していたり、脳が傷ついて出血(脳挫傷や硬膜下血腫など)していることもあり、中には手術が必要になるような場合もあります。
もちろん「たんこぶ」ができていない場合でも、ひどい脳のケガをしていることがあります。
すなわち「たんこぶ」が”できる・できない”ということで、”大丈夫・大丈夫でない”を判断することは絶対にできないのです。
このような「迷信」に振り回されていると、命の危険も出てくる場合があるので、絶対に気をつけましょう!
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それでは、頭を打った時にはどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
僕がいつも診察の時に使っている「頭を打った患者さんへの注意事項」の説明用紙があるので、その内容を紹介しようと思います。
頭を打った患者さんへ <頭部外傷後の注意事項>
頭を打った時には、脳にいろいろな変化が起こることがあります。
特に頭の中に出血が起こると生命に危険を及ぼすことがあります。
頭を打った後、元気だった人が急に意識がなくなってしまうことがあるのも、このような頭の中の出血(頭蓋内出血)が原因の場合もあります。
この頭蓋内出血は、頭の表面の傷や頭蓋骨の骨折がなくても起こり得るので、決して安心はできません。
① 頭痛がだんだん強くなり、吐き気や嘔吐が何回も起こる。
② ぼんやりしてきて、放っておくとすぐに眠ってしまう。起こそうとしても、なかなか起きなかったりする。(受傷当日は夜間でも時々起こしてみて、はっきり返事ができるか確かめて下さい。)
③ ものが二重に見えたり、ぼんやりして見えにくくなる。
④ 手足が動かしにくくなったり、しびれたりする。特に右と左で動きが違う。
⑤ けいれん(手足のひきつけ)が起こる。
もし上記のような症状が見られた時は、すぐに医師の診察を受けて下さい。
このような症状はすぐに起こることもありますが、2〜3日または数週間〜数ヶ月経ってから起こることもあります。
頭を強く打った後は、少なくとも1〜2日間は安静にし、調子が悪ければ入浴を控えて頂く方がよいでしょう。
また一人で遠方に外出しないよう注意して下さい。
【高齢者の場合】
頭をぶつけた後、数週間〜数ヶ月くらいして頭の中に血液がたまることがあります(慢性硬膜下血腫)。
経過中に①頭痛・吐き気、②歩くことが難しくなる、③認知症が進む、などの症状が現れるようなら、医師の診察が必要です。
【子供さんの場合】
小さい子供さんは相当強く頭を打った時でも、症状が出にくいことが多く、また自分で症状を正確に伝えることができません。
たとえ元気にしていても、2〜3日は目を話さないよう注意が必要です。
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以上になります。
頭を強くぶつけた時の参考にしていただければ幸いです。
「たんこぶ」ができる・できないに関わらず、頭を強く打った時はくれぐれも注意して下さいね ^ ^
それではまた!