【保存版】くも膜下出血のすべて

くも膜下出血、SAH

 

くも膜下出血」は、健康で普通に生活をしている人突然襲いかかってくる恐い病気です。

今回は「くも膜下出血」の原因や症状、そして手術などの治療法や予防法などを、わかりやすくまとめてみます。

お医者さんの話が難しくてわからない患者さん、実際に脳外科診療に携わっているコメディカルの方々、ぜひ参考にしてみてください!

 

※「くも膜下出血」に関係するアキラッチョの記事がすべてリンクされています。もっと詳しい話を知りたいときは、病名などをクリックしてみてください ^ ^

 

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くも膜下出血の原因・症状

くも膜下出血の原因で一番多いものは、脳の血管にできたコブ「脳動脈瘤」です。

この脳動脈瘤が突然破裂することによって、くも膜下出血を起こします。

 

くも膜下出血の特徴的な症状は「突然の頭痛」です。

しかも「今までに経験したことのないような激しい頭痛」の時はくも膜下出血の可能性が非常に高くなります

脳動脈瘤が再破裂するようなことがあれば致命的になるので、突然の激しい頭痛が起こった時はすぐに救急車を呼びましょう!

 

くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療は病院に到着した時から始まります。

患者さんの生死に関わる初期治療の話や、クリッピング手術カテーテル治療についてそれぞれ解説していきます。

 

くも膜下出血、クリッピング術

 

初期治療

くも膜下出血の治療は救急搬送された時から始まります

脳動脈瘤を再破裂させないためは、以下の3つの初期治療が重要になります。

 

・「鎮痛・・・頭痛を和らげる

・「鎮静・・・頭痛で暴れる患者さんに眠っていただく

・「降圧・・・血圧を下げて脳動脈瘤が再破裂しないようにする

 

症状からくも膜下出血が疑わしければ、検査の前にまずこの3つの初期治療を優先します

そして初期治療をきちんと行なった段階で脳の検査を行い、くも膜下出血と確定診断がつけば手術などの治療を行います。

 

【重症度別】くも膜下出血の治療法の選択

くも膜下出血の重症度は「WFNS分類」によって、グレードⅠ(軽症)からグレードⅤ(重症)5段階に分類されます。

この重症度によって、くも膜下出血の治療方針がある程度決定されます。

 

グレードⅠ〜Ⅲまでの「重症でない」くも膜下出血は、できるだけ早期に積極的な治療を行います。

グレードⅣの「比較的重症の」くも膜下出血は、患者さんの年齢や脳動脈瘤の部位などを検討した上で、治療を行うかどうか検討します。

グレードⅤの「最も重症の」くも膜下出血は、患者さんの状態が悪すぎるため、原則として手術などの積極的な治療を行いません。

ただし、少しでも状態の改善が認められれば、治療を考えるケースもあります。

 

クリッピング術(手術)

破裂した脳動脈瘤の治療は、今も昔も「脳動脈瘤クリッピング術」が標準治療になります。

くも膜下出血の患者さんに全身麻酔をかけて開頭(頭蓋骨を外す手術)し、顕微鏡を使いながら脳の手術を行います。

破裂した脳動脈瘤が確認されば「クリップ」という道具で挟んでしまい、二度と脳動脈瘤から出血しないように処置をします。

※ 実際の手術中の写真もあるので、ぜひ「クリッピング術」の記事をご参照ください ^ ^

 

コイル塞栓術(カテーテル治療)

くも膜下出血を”切らずに治す”治療が「脳動脈瘤コイル塞栓術」です。

患者さんの脚の付け根の血管からカテーテルを挿入し、脳動脈瘤のできている脳血管まで進めていきます。

そこで「コイル」という細い針金みたいなものを脳動脈瘤の中にグルグルと巻くようにつめて、再破裂しないように血管の内側から処置する治療になります。

患者さんの体の負担も少なくてすむので、コイル塞栓術で治療される患者さんの数がどんどん増えていますが、脳動脈瘤のサイズが大きいものなどは再治療になる可能性が高いので、安易にコイル塞栓術を選択するのは危険です

 

リハビリテーション

くも膜下出血を起こした患者さんの中には「手足の麻痺」や「言語障害」などの身体機能障害が出現する方も多いです。

この身体機能障害を少しでも改善させる治療が「リハビリテーション」になります。

くも膜下出血の患者さんは、手術などの治療を終えた直後の「急性期」から積極的なリハビリテーションを行うことが重要なのです。

急性期リハビリテーションのポイントは次の3点になります。

 

座らせる立たせる

刺激を与える

運動させる

 

急性期に「安静臥床」をさせることは患者さんにとって麻薬のようなもので、確実に心身の状態を悪化させます

急性期から行う積極的なリハビリテーションが、患者さんの「生活の質」に大きく関与していることは間違いありません。

 

脳卒中、リハビリ

 

くも膜下出血の合併症

くも膜下出血は、脳動脈瘤が破裂した時の最初のダメージだけではなく、生命予後を大きく左右するような「遅発性」の合併症が2つあります。

この重要な2つの合併症について、それぞれ紹介していきます。

 

脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)

くも膜下出血によって、脳の表面は”血まみれ”になってしまいます。

この血液にさらされた脳の血管が、血液中の物質から刺激を受けることによってどんどん縮んで狭くなってしまう現象が「脳血管攣縮」になります。

脳の血管に血液が流れにくくなるので「脳梗塞」を起こしてしまい、手足の麻痺や言語障害などを発症してしまいます。

脳血管攣縮を予防するために「脳槽ドレナージ」によって原因となる血腫を排出させたり、「ファスジル」や「オザグレル」といった点滴治療も行います。

 

脳血管攣縮を早期発見するための超音波検査「経頭蓋的ドップラー検査TCD)」で脳血流を調べたり、「MRI・MRA」で実際に脳血管の状態や脳梗塞の有無を調べることができます。

もし脳血管攣縮が確認されれば「ファスジルを直接脳の血管に流すカテーテル治療や、狭くなった部分を血管の中からバルンとよばれる風船で膨らませて広げる治療「経皮的血管形成術PTA)」といった治療を行います。

 

正常圧水頭症

正常圧水頭症」はくも膜下出血後、数週間から数ヶ月して起こる合併症です。

くも膜下出血によって、脳脊髄液の流れが悪くなることが原因となります。

正常圧水頭症の特徴的な症状は次の3つがあります。

 

歩行障害

尿失禁

認知症

 

くも膜下出血後にこれらの症状が出現し、頭部CT検査で「脳室拡大」という正常圧水頭症に特徴的な所見が認められれば、過剰に溜まりすぎた脳脊髄液をお腹の方へ流して抜く手術「脳室-腹腔シャント術」を行います。

 

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未破裂脳動脈瘤

脳のMRI・MRA検査をすると、たまたま脳動脈瘤が見つかることがあります。

この未破裂脳動脈瘤ですが、日本人全体の2〜6%の人がもっていると言われています。

この未破裂脳動脈瘤が見つかった時の、手術や手術適応について紹介します。

 

クリッピング術(手術)

未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は、平均で一年間に0.64%と非常に低いことがわかっています。

ただし、脳動脈瘤のサイズが「大型のもの」や「形が悪いもの」(脳動脈瘤自体にコブができているようなもの)は、破裂してくも膜下出血を起こす確率がグーンと高くなります。

このような破裂しやす脳動脈瘤は、くも膜下出血を未然に予防するためにも手術治療が必要になります。

 

未破裂脳動脈瘤の手術適応

未破裂脳動脈瘤の中でも、特に破裂しやすいものは、手術などの積極的な治療を考えた方がよいでしょう。

破裂しやすい脳動脈瘤は以下のものになります。

 

・大きさが5mm以上の脳動脈瘤

・大きさが5mm未満の脳動脈瘤でも・・・

 ① 症状のある脳動脈瘤

 ② 前交通脳動脈瘤(A-com A 動脈瘤)

 ③ 内頚動脈-後交通動脈瘤(IC-PC 動脈瘤)

 ④ 不整形脳動脈瘤自体にコブができている

 

脳動脈瘤の大きさと形状だけでなく、できる場所によっても破裂する確率は変わってきます

患者さんの年齢や健康状態なども加味して、手術などの積極的な治療をするかどうか、十分検討する必要があります。

 

くも膜下出血、治療

 

その他

突然「右半身麻痺」と「失語」を起こした患者さんは、どんな病気を考えなければならないでしょうか?

実は「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」のいずれの病気でも、全く同じ症状を起こします

ただし、病気によって対処の方法血圧管理などの初期治療全く異なるので注意が必要です。

 

※「同じ症状で発症する3つの脳卒中」の話はこちらの記事へ→

 

 

匠の手」で知られる脳神経外科手術の達人上山博康先生のもとで手術の勉強をさせていただきました。

一緒に働いてみて、あらためて日本一の脳神経外科医の凄さを知ることができました。

手術のことだけでなく、生き方や人生についてもたくさん学ぶことができました。

そんな上山博康先生の”ナマ”の声による「名言」を集めてみたので、ぜひ読んでみてください ^ ^

 

※「上山博康先生の名言【手術室編】」の話はこちらの記事へ→

 

※「上山博康先生の名言【仲間・笑い編】」の話はこちらの記事へ→

 

※「上山博康先生の名言【人生編】」の話はこちらの記事へ→

 

まとめ

脳神経外科医として10年以上働いてきましたが、老若男女、本当にさまざまな「くも膜下出血」の患者さんを診てきました。

 

一番若い患者さんは小学生のお子さんでした。

くも膜下出血を起こした瞬間にほぼ脳死状態となってしまい(重症度:グレードⅤ)、手術を行うこともできず、救急搬送された当日に亡くなられました。

 

また30歳代の若いお父さんで、手術はうまくいって、会話をしたり食事を食べたりすることもできていたのに、術後一週間目に起こった「脳血管攣縮」のために、若い命を落とされた患者さんもいます。

まだ小学生だった息子さんがベッドサイドで泣いていたのを、今でも思い出すことができます。

 

もちろん残念な話ばかりではありません。

80歳を越えるような高齢者のくも膜下出血患者さんでも、治療がうまくいって元気に生活されている患者さもたくさんいます。

職場復帰して、普通に生活されている若い患者さんもたくさんいます。

退院後の外来診察のたびに、くも膜下出血で治療した患者さんたちが元気な姿を見せてくれるのは、脳神経外科医にとって本当に嬉しいかぎりです ^ ^

 

2017年の夏も非常に暑いですが、水分摂取を心がけてなんとか元気に乗り切りましょう!

このブログを読んでくれている皆様の健康を、心よりお祈り申し上げます。

 

それではまた!

 

くも膜下出血、脳卒中、脳動脈瘤